写真入り・山日記

        

     船形山(標高1500メートル)


     2012年04月29日 (日) 天晴れ(あっぱれ) 


この日の山行は毎年の確定行事であります。
第一目的は、5月3〜4日のブナ平テント泊時に呑む酒類を荷揚げして来る事であります。
しかし本日は、千葉B隊長が地図上で面白い尾根ルートを見つけたのでそれを登って山頂へ行くと言う、大に目的が課せられていたのでありました。

おっさん、待ち合わせに遅れる事は稀なんですけれども、本日はチョット事情がありまして、一度立ち去ったコンビニにもう一度戻るなどしていたもんで、予定より20分遅れちまいまして、出発が7時20分になっちまいました・・・言い訳終わり。

       

待ちに待った、今年初物のイワウチワです。
 
そんな訳で少し出遅れたんでありますが、快晴の空のもとダラダラと出発であります。
メンバーは、千葉B隊長・宮城のチャンこと千葉S氏・千葉S氏息子・Y嬢・おっさんの総勢5名であります。
出発時旗坂の駐車場には10台程の車が居ましたが、連休の日曜日にしては少ないような気もしますが・・・まっ、昨年は天気が悪かったのと震災の後と言う事でもっと少なかったんですけれども。
と、言う事で30番から登って行きますと、すぐ上の28番当たりで先日の爆弾低気圧で倒れた巨木が道を塞いでいたりする訳です。
邪魔になるのは完全に登山道を塞ぎつつ、茂った枝がとても邪魔な一本だけなんですけれども、たぶん夏道になって登山者が増えれば、奇特な誰かがノコギリなど持って来て枝を除けてくれる事でありましょう・・・期待してます。
で、おっさんらが「イワカガミ平」と勝手に名付けている辺りで、今年は雪が多かったからダメだろうと思っていたにも拘らず、見事に群落が展開されていまして、今年初のイワカガミに驚喜でありました。


デポ品のお飲物各種とご一行様。

三週前と比べると随分と雪解けの進んだ船形山でありまして一群平あたりは登山道が丸見えでした。
そんな訳でいつもの道とも言えるブナ平まで・・・おっさんは缶ビール350×6本と焼酎を少々担いだだけなんで軽いのですけれども、他のメンバーはそれぞれがお好みの飲み物を持って来ている訳ですが、瓶類が数本あるのには驚きです・・・詰め替えるとか、紙パックを選ぶとかしないのが宮城のチャンさんの凄い所です。
えっ?チャンさんは中国人か?と?・・・いいえ石巻の出でして純粋な日本の田舎のおっさんであります。
で、この呼称は本人の了承は得ていません・・・が、一緒に歩いていると、風貌などもそうなんですが、笑いの方向と居ますか、会話の端はしに「惚れてまうヤロ〜」を感じる訳であります。
本人から意義が出た場合は宮城のチャンは撤回させて頂きますが・・・たぶんOKでしょう。


保野川は一部で沢の流れが見える程になっていました。

ブナ平で酒を下ろし、行動食を腹に入れ千本松山をかわし保野川徒渉点へ向かいました・・・快晴で汗だくでありました。
で、前回は新雪のラッセルがきつかった為かけっこう遠いなと思ったんでありますが今回はあっという間でありました。
おそらく二度目なので無駄なワインディングが皆無で最短を結んで歩けたからでありましょう・・・千葉隊長の1100メートル平行移動作戦が辺りだった訳です。


宮城のチャンさんがコレから行く尾根を睨んでいました。

さて、この度のルートは我々の誰もが初めてでありまして、頼みは地形図の読みと勘だけであります。
取り付き場所は保野川を渡ってすぐ、船形山の山頂小屋の下へ真っ直ぐ突き上げる「男の直登・一本道」であります・・・いや、正直に申し述べれば、この時点では概ねあっちの感覚でありまして、確信は無かったのでありますが。


升沢コースより1.5キロ程短縮される分傾斜は急です。

そんな訳で「男の直登・一本道」を快調に登って行く訳ですけれども、これが船形山頂を目指すどのコースよりも眺望に優れている訳であります。
まず、七つ森全山・泉・北泉・三峰(みっつ)蛇ヶ岳・後白髭などの東から南方向が見える訳です。
で、その後、新庄神室の連峰と鳴子方面の山並み、栗駒山系が見えるのであります・・・この事は尾根が細い事の証でありましょう。
実際、一部では北側がすっぱりと落ちている所もあり、本当の積雪期には難儀するルートだろう事は容易に想像がつきます。
しかし、尾根は急傾斜で登るのでキツイんですけれども気持ちよい程に高度も稼ぐのであります・・・本日の紅一点、Y嬢でも登れるけれどもこのルートは紛れも無く「男の直登・一本道」であります。


千畳敷につながるカール的雪原・・・写真右寄りを直登であります。

いや、傾斜がキツイんで息は切れますが升沢小屋の裏から直登を掛けた時程の危ない傾斜では無い訳で、全員アイゼンを持っては来ましたがキックステップで十分対処できる範囲でありました。
船形山に限らず、スキー場の斜面以外でこれほど広い雪原を知りません・・・この開放感と爽快感はこの辺の山では比類無きものであると、おっさんはきっぱりと断言します・・・いや、距離では比べるべくも無いですけれども、開放感では石転び雪渓よりずーっと上です・・・まっ、快晴でしたからね。
で、このルートは升沢小屋へ行くにもたぶん最短距離じゃないのかと思うんでありますが、地図をちゃんと読んで行かないと保野川の滝に引っかかったりするかも知れないので注意が必要かもしれませぬ。


目視では三峰などの上に来ています。

あらぁ〜だいぶ高度を稼いだなぁ、上に見える薮を超えたら少し左に振るのかな?などと思って登っていたら、突然アンテナが見えた訳です。
そして、逆光気味見覚えのある屋根が・・・ありゃぁ、なんとぉ〜小屋の真下に出ちまったぞぉ、と。
いや、地図でこのルートを見つけた千葉B隊長の素晴らしい読みに拍手であります。
で、このルートの最大の難関は小屋の手前に広がる薮の突破でありました。
距離にして僅かに30メートル程度なのでありますが、コレがまた言葉では伝えられない程の密な薮な訳であります。
いや、沢の後の笹の薮漕ぎと違って灌木帯の密な枝を掻き分ける物でありますからそれは中々に大変な物でありました。


宮城のチャンさん・・・千葉S氏とおっさんのツーショットです。

山頂到着は予定通りのほぼ12時でありました。
すでに10名程の人達がくつろいでいました・・・うん、流石に晴天の日曜日であるな、皆して小屋には入らず外で休憩であります。
で、千葉隊長は小屋番(小屋の管理人)なので先の爆弾低気圧で被害を受けた箇所など確認したりもする訳です。
いや驚いたのは、小屋へ入る為の階段も飛ばされてなくなっている事でありました・・・恐るべき威力の低気圧であります。


屋根がめくれて痛々しい船形山頂避難小屋

さて、我々一行は小屋に入りそれぞれが昼飯を食べた訳でありますが、千葉S氏が噂の「棒ラーメン」をもって来て煮て食った訳であります。
いや、このラーメンは長期縦走をする山屋には大変評判の物なのだそうでありますがおっさんは現物を見た事も食った事も無かった訳です。
この度初めて遭遇して少し摘んでみたんでありますが、豚骨タイプの味は中々の物でありました・・・で、山屋に受けるもう一つの理由を知った気がした訳でありますが・・・それは、二食分で100円と言うとても経済的な価格によるモノでは無いのか?
ただでさえ金のかかる食料を幾らかでも安く押さえようとする貧乏な山屋の姿の一端を垣間みたような気がしたのは、おっさんの錯覚でありましょうか?。


升沢小屋であります・・・この日はチャンさんが雪かきをしていました。

山頂小屋を出た時にはもう人は殆ど下山に向かったようで、おっさん等が到着した時に昼寝の体制に入った若者が相変わらず寝ているだけでありました。
で、元来た道を戻っても良かったんですけれども、千葉B隊長が升沢小屋も見て回らないと行けないと言うんで帰り道は普通に戻る事になりました。
いつもの様に尻セード用のビニールなど持参しているので滑り降りた訳ですが、何でこんな事がこれほど楽しいのか、やってる本人にも分からない程に楽しいのであります・・・尻は冷たいんですけれども、これが許せるのが春山の良い所であります。
いや、昨年の同月同日には時折吹雪き模様の中で防寒装備に身を固め毛糸の帽子まで被っていた訳でこの日の天気は大当たりだったと言う事でしょう。

そんな訳で升沢小屋へ立ち寄りまして、コーヒーなど入れてまた休憩であります。
で、日当り抜群でポッカポカの小屋は居心地が良く、あらっと気がつくと既に3時半でありました・・・1時間半も待ったりとしていた訳であります。
ンじゃぁそろそろ帰るスカぁ?と小屋を出たんでありますが、おっさんなどは明日も休んでも差し支えない訳で、このままここに泊まって行きたかったなぁ、と後ろ髪を引かれる訳であります。 ナンとなれば、ブナ平には腐る程の酒が埋めてあるし、宮城のチャンさんはまだ棒ラーメンを沢山背負っていたし・・・ああ、泊まりたい、でも取り敢えず帰ろうと・・・。


ブナの倒木であります。

帰り道はいつもの事ではありますが、バラバラであります。
頂上を目指すと言う共通の目的が達せられ・・・まっ、下山も共通の目的ではあるのですけれども楽しみ方がそれぞれな訳で、歩みも違って来るのだろうなとおっさんは思っているのでありますが。
で、ブナの倒木を見て千葉B隊長が「潔い姿であるな」とえらく感動して唸っているのであります。
倒木は朽ちていた所に低気圧の強風を受けバッタリと倒れたのでありましようが、倒れた衝撃で全身をバラバに砕いている訳であります。
その姿はあたかも、我が身の始末は己でする、と言い切っているようで誠に潔い物を感じるのでありました。
で、一同ブナの姿を目の当たりにして、己の最後もかくありたいモノである、と言い、もの言わぬブナに合掌したのでありました。

さて、最早夏の空の様相を呈しておりまして日暮れが迫って来ると言う感覚はないのであります。
一日を惜しむ様にゆっくりと西に傾くお日様に歩調を合わせ、五人は思い思いにブナの森を下って行くのでありました・・・いつもの事なのですけれども駐車場が近づくにつれ、不思議と皆無口になるのであります。
旗坂の駐車場到着は5時半でありました・・・本日は船形山の懐の一番深い所をくすぐって来た感じでありまして、帰ろうとする我々に山は、ンじゃまたな、と言っていたのでありました。


       いやぁ、船形山の味わい方は奥が深すぎて、まだまだであります。


     この話 完


山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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