よたよたと、山登り


    No.100

       

    四つん這い的山登り

         8月28日 日曜日 晴れ

     本日は仙台市議会議員の選挙でありますので、市民の義務として投票など行った訳です・・・すると、西の空が思いのほか明るく天気が良いのであります。
    体調は今イチなんだがなぁ・・・登るのに楽で気持ち的に楽しい山?しかも久しぶりに晴れた日曜日でも空いている山・・・そんな贅沢な山が有るのか?・・・いや、有るぞ・・・沢渡黒伏・・・分県登山ガイド・山形県の山に星三つで危ない山と記されているけれども、体力マークは星一つ・・・これは、技巧派の山であると解釈して良いのかな?・・・まっ、万人が利用する案内書に書かれているのであるからして、話半分の六掛けと言う所か?・・・と、言う事で気楽に出かけてみたのであります。
    しかし、一応は星三つを尊重して、カラビナ一枚と60センチと120センチのベルトスリングを各一本と、6ミリ20メートルを持って行ったのであります・・・用心深いのでありますね。
    しかし、後で現場で気がついたんでありますが、20メートルだと思っていた6ミリは、スリングを作ったりアブミの紐に取ったりして随分短くなっていたのでありました。
    いや、あと5メートル欲しかったなと思った所を鑑みますれば、恐らく13メートル前後になっちまっている、と思うのであります。
    まっ、こう言う事を書くという事は、ロープを使ったという事なんでありますね。

     いや、出遅れている上に東根で道に迷って右往左往しまして、ジャングルジャングルのスキー場まで行っちまって戻ったり、林道に入るのを白水川ダムの脇をまっすぐ行っちまって戻ったりと、帰り道は1時間だった所を1時間50分も掛かって行った訳です。
    いや、下調べもナンにもしないで、国道48号線から見える黒伏し山を目当てに適当に行ったもんですから、まあ、自業自得と言いますか、迷うべくして迷っている、と申しますか・・・間抜けであります。

     さて、沢渡黒伏と観音時黒伏へ行く林道は遅沢林道で同じなんでありますがおっさんは沢渡黒伏の入り口を通り越して林道のどん詰まりまで行ってみた訳です・・・この林道は、標高900メートルできっぱりと行き止まりでした。
    あいやぁー・・・今日は山登りはやめてそこいらで弁当を食ってビールを飲んで昼寝して帰るのかなぁ? あっ、白水川ダムの湖畔に良さげな東屋があったっけな、とか思いつつ下ってくると、林道が三叉路になって、あっちへ続く轍もそこそこのモノな訳です・・・ありゃぁ、これはナンだろ?で、行ってみると「黒伏神社」と書かれた真っ赤な鳥居が有るじゃないですか・・・これだっ、これだよ探し求めていたモノは、と言う事でやっと登山口に到着したのは10時45分でありました。
    まっ、ガイドブックでは登り2時間10分と言うお手軽コースなんで1時頃には山頂に着く訳だし・・・メシ食って一眠りして下山して3時半か?と、気楽に構えておりまして、10時50分出発、と。

    鳥居をくぐって登山道へ入ると鬱蒼とした杉林が続きます

     で、ほんの少し行きますと白い立て札が有りまして、この山の険しさは半端な山じゃないんで、半端な登山者は入っちゃいかんよ、と書かれている訳です・・・うーむ、おっさんの技量はまさしく半端なんだけれども、まっ、気合だけは一人前以上なんで、足りない技量は気持ちで補うという事で先へ進む事にした訳であります。

     
    いや、岩登りの装備と技術が必要だと書かれていますが・・・

     で、看板の言葉にビビると同時に、数年前にこの山で滑落しての死亡事故が起きていた事を今頃になって思い出しちまった訳です。
    そこまでの山なのか?本当に行くのか?・・・君は行くのか、そんなにしてまで、と自問自答していると、間もなく小さな社に出会うのでありまして、これが「黒伏神社」でありました。
    神社の脇にはしっかりと踏み跡が有り、なんだか普通の登山道っぽいな、と一瞬安心したのもつかの間で、すぐに、どっちへ行けば良いのでありますか?となるのであります。

    スズメバチの巣が有るんで気をつけましょう

     さて、黒伏神社の裏手に回るとここからが本気の沢渡黒伏の登山道であります。
    で、道は沢筋を登るんでありますが、よく見れば赤布やピンク布などが下がっていまして、この手のルートになれていれば迷う事は無いようであります。
    ただ、赤布を追って道を探す経験がなかったり、踏み跡を感じ取って道を見分ける山登りをしていない人は難儀する事間違いないので入山する時は遭難する覚悟が必要かも知れません・・・いや、ハッタリでも脅かしでも無く、幾分かの誇張のみであります。

     さて、急な登りである、とは書いてあるんですけれども、それは正真正銘掛け値なしの事でありまして、まず手足を総動員しないと登れない訳で、腕力に自信の無い人も止めた方が良いかも知れませぬ。
    いや、クライミングのように立ちこんで登れるのであれば手も休まるんでありますが、何せ足場がズルズルなので手を離すと落ちて行く訳です。
    もっとも下が結構湿っていたので雨が続いての事なのかも知れませんが、傾斜の急さと足場の悪さの相乗効果で登り難い事は天下一品で有りました。

    鎖も有るんですけど、無いよりは助かる、程度のモノであります。

     いや、鎖場なんかは大した難所ではないのであります。
    本日のハイライトは、マツの大木が根元から崩落して登山道に引っかかり道を塞いでいた所でありました。
    根っこを掴んで這い上がろうとするとブチっと切れるし、その度に土がぼろぼろと頭に落ちてくるんで上は向けないし目は開けられないし・・・本気でここで止めようかと思っちまいました。
    で、良くよく見ると左手を迂回した跡ともとれそうな何となく誰かが踏んだかもしれない感じの跡が見えなくもない、と思えたのでありますが、そこは傾斜もそこそこで、一発滑ったら随分景気良く下まで行きそうなので、止めました。
    結局は松の木を乗り越すのに10分近くも掛け、泥まみれになりながら乗り越したのでありました。

     
    こいつめが、この松の根っこが・・・これは帰り道に上から撮りました。

     そんな訳で松の根っこを乗り越した時にはかなりの疲労感と言いますか、どちらかと言うと山登りでの疲労感というよりもトラックで1500メートルを走った後のような息苦しい疲労感なので有りました。
    で、何となくお休みください風のテラスになった所で一息入れようとしたら、ありゃぁ?穴があいている・・・これが噂の「龍王洞」でありますか?と言う事で、ザックを下ろして休憩であります。
    おお、非常装備の中にヘッドライトがあるっちゃ・・・よっしゃぁ穴に潜るべし、と言う事で一息入れて穴へ・・・。

     
    入り口は狭いというか、下に向かうんで入り難いんですが出る時は意外と楽です。

     途中でタオルを落として来ちまって汗を拭くモノが無い訳です・・・何かボロ布とか入っていないかと見たんでありますが、赤布の束が一握り・・・まっ、これでもいいや、と赤布で汗を拭きつつ穴へ潜って行った訳です。
    いや、おっさんは物の怪とか霊的なモノと言うのは信じないんでアレなんですが、ここは一寸異質です・・・何かを感じる、誰かがおっさんを見ている、と思ったらコウモリでした。

    冷たく重い空気に息苦しさを覚えた頃、何やら箱が・・・

     いや、湿っぽいというよりも外気温との差で霧が立ちこめていて視界は悪いし、ヘッデンの明かりはショボイしで、足下もよく見えない訳です・・・いやぁ、思ったよりも随分深いなぁ・・・しかも濡れた岩の乗り越しでズボンは冷たくなるし・・・こんな時にマグニチュード8とか来たらドーする? なんて事を考えつつ進むと、ぼんやりと箱が見えたのでありました・・・ああ、これが祀られている龍王さまか? いや、それにしては随分と古びてくたびれているな? まっ、見たからいいや、さっさと退散、と。
    で、入る時には気づかなかったんですけれども、出口に向かってからコウモリの糞とかが目につき、そして、そこはかとないアンモニア臭などもする訳で、まっ、わざわざ見たからドーという事も無いモノなんで、無理して入らなくても良いんじゃないのかな、と。

    これが龍王様が祀られている祠と言いますか、赤い箱です。

     案内所によりますと時間的にはここで中間点なんでありますが、距離で行くとあと僅かなんであります。
    しかし、沢渡黒伏のホントの昇りはここからである、とも言える訳です。
    で、GPSの軌跡と案内書に付いている地図を見比べますと、龍王洞から上が少し違うんじゃないか、と思うのであります。
    いや、案内所のルートは1000メートルの等高線から上も殆どまっすぐに登っている感じなんですけれども、おっさんの軌跡は右方向へ随分と迂回しているんでありますね・・・一度下ってトラバースして元の位置へ戻ってくる感じで狭い尾根を歩いていると思うんですが、しかし、案内書に付いている地図は小さくて正確には読めないのでナンとも言えませんが・・・。
    もう一つ、迂回してるんじゃないのか?と思う根拠は、岩登りという程の岩場は、目の前に現れはするけれども、全部巻いている訳で、一つも岩登りらしい事はしていないのであります・・・下の看板にも岩登りの技術が必要である、とキッパリ書かれている訳ですから。
    で、ここからの登りも半端ではないんですけれども、それは手当り次第に木の根っこを引っ掴んで腕力で登ると言うモノで、技術云々とか岩登りのテクニック云々というのは皆無であります。
    いや、傾斜が急なんで滑ったり手を離したらヤバイ事になりますけれども、それは岩場の滑落というのとはちょっと違う訳で、見方によってはロープも着けていないんで岩登りよりも厄介という事も出来るのでありますが。
    さて、最後は薮になりまして、灌木を引っ掴んで薮漕ぎをして、と、まるで沢を詰め切って稜線にでる感じでやや唐突に頂上にでるのであります。

    棒が一本立っているだけの山頂です。

     山頂到着は1時10分でありました・・・都合2時間20分・・・龍王洞での時間を入れればコースタイム通りであります。
    しかし、足は一杯いっぱいの感じですし、何よりも腕がとても怠い訳であります・・・草掴んで頑張っちまったからなぁ、と。
    で、いつもであればここでコンロを出してお湯を沸かし焼きそばと缶ビールと行くはずなんでありますが、本日は下山の事を考えビールは止めにしました・・・いや、まだ転がって怪我とかは嫌ですから。
    と、言う事で、あんぱんを食って、アミノバイタルなんか飲んで、ソーセージなんかも食って・・・いや、ソーセージを食うと条件反射でビールが欲しくなっちまうのを発見しまして、今後このような状況の折にはソーセージはダメだな、と。

     山頂で涼しい風に吹かれ、遠くの山並みや山形の街を眺めていると、動かないおっさんに安心したのか、トンボがだんだんと寄ってくる訳です。
    初めは数える程しか居なかったアキアカネが山頂一面にビッシリと言う感じで群れて飛ぶのであります。
    穂を開き始めた若いススキの葉や枝に留るトンボに見とれているうちに日が少し傾いて来たのを感じ、下山開始であります・・・1時40分でありました。

     さて、沢渡黒伏は、登りも下りも同じ方向を向いて行くのであります・・・要するに、下山はケツから降りるという事であります。
    いや、前を向いて降りても良いのですけれども、まっ、やれるものならやって見なさい、と言う感じで、草木を引っ掴んで後ずさりスタイルで降りるのがこの山の由緒正しい降り方であろうとおっさんは思います。

     
    まっ、ロープが無くても下りらますが、懸垂風に降りると楽な箇所が2カ所。

     で、一番の難所だと覚悟していた「松の木倒木乗り越え」は呆気ない程簡単に終わっちまいまして、成る程ねぇ、上りと下りってこんなに感覚が違うんですかぁ・・・と、言う事で、沢渡黒伏は登りで思ったよりも下山は簡単であります。
    いや、登りの苦労との相対的な話でありまして、楽だとは言えませんけれどもね・・・それでも、登りでヤバイと思った所は却って楽勝で、アレっ?と思う所で掴む草が見つからずにロープを出したのが2カ所有りました・・・無くても降りられますけど怖いです。
    あとアレです・・・木の葉の下に石が隠れているんで少し傾斜が緩くなったと思って普通に歩くと見事に足払いを食らってスッ転びまして、おー痛ぇ、と唸りながら下山したのが3時20分でありました。

     看板で言う道間違いは、たぶんおっさんの後の人は大丈夫です・・・おっさんが汗ふきに使った赤布を、持って帰るのもナニなんで無駄に着けてきましたから。
    そんな訳で、まず、沢渡黒伏は一般登山道ではないですけれども、そんなに大騒ぎする程のモノでも無いとは思います。
    しかし、手の皮の弱い人は軍手と、20メートルくらいのロープか紐が有ればより安全であるので、持って行く事をお進めする次第であります・・・この山は、雨が降りそうならおっさんは行きませんね。


       この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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