よたよたと、山登り


    No.107

       

    船形連峰 寒風山

         04月15日 日曜日 晴れ 

     

    舐めんなよ 寒風山


     先週の前船形山完登ならず、から一週間、訳の判らない体調不良により静かにしていた訳です。
    予定していた雁戸山から中央蔵王方面へ一泊の山行も取りやめ静かにしていた訳です・・・咳が止まらないんであります。
    で、本日、起きたらとても良い天気な訳で、ンじゃぁ足慣らしに軽く泉ヶ岳でも・・・ああっ、本日は日曜日かぁ、混むなぁ・・・ンじゃぁ軽く寒風山なんかが良いんじゃないか、と言う事で、泉ヶ岳程度の認識で出かけた訳であります。
    いや、アイゼン・ワカン・ピッケルの三点セットは持ったんでありますが、道具の準備よりも心の準備が成っていなかった訳で、はっきり言って大変でした。

    いや、取り付きから難所の連続で難儀しました

     関山トンネルの入り口脇の駐車場には1台停まっていて先行者あり・・・踏み跡有り・・・ラッセル楽の図式が確定した訳であります。
    いや、それにしても残雪が多いな、しかも、腐れ雪でズブズブ、急斜面では雪が崩れて滑り落ちそうな感じ・・・何となく嫌な雰囲気が漂う砂防堤の登山口を踏み切ったのが9時10分でありました。
    で、おっさんがスタートすると同時にもう一台の車が入って来て単独の男性が身支度を整え始めた訳です。
    あっちゃぁー、すぐ来られると拙いんだよなぁ・・・いや、早速もよおして来ちまった訳で、出来れば早急に大雉子を撃ちたいのであります。
    いや、結構切羽詰まった状況でして、おっさんはこの時だけ、まるでカモシカのような感じで残雪崩れる斜面を駆け上り、一応物陰を確保して事に及んだ訳であります。
    まず、この間の機敏な動きと洗練された身のこなしは長い間の雉子撃ち体験が無駄では無かった事を物語る訳でして、我ながら感心する所でありました。

     さて、人心地ついて歩き始めると、今度は急傾斜の腐れ雪が現実として迫って来る訳であります。
    まず、沢沿いに行ければ楽でしょうけれども、いつもは大した事の無い枯れ沢が結構な勢いで流れているのであります・・・先行者も沢は避けている模様だし。
    しかも、一部には斜面から落ちたデブリが、なぎ倒した樹木やら土を巻き込んで堆積している訳です・・・うーん、やっぱし沢沿いは難しいんだな、と。
    そんな訳で、沢沿いを行けないとなると急斜面をトラバース気味に行くしか無い訳でありますが、標高が低いんで雪が融けて足を踏ん張るとすぐに崩れ落ちる訳です。
    で、崩れ落ちた雪の下からは青々とした笹が出て来る訳でして、コレがまた良く滑る訳です。
    いや、ホントに、先行者が居なかったら諦めたかも知れない・・・いや、先行者が崩した後だから歩き難かったのか? まず、ナンであれ、ずり落ちないように歩くのに必死でありました。

     ところが、先行者2名の歩みは結構遅くて夏道の涸れ沢を渡る辺りで追いついちまったのであります・・・追いつけば必然的に先頭交代。
    あいやぁ・・・やっちまったなぁ、とも思ったんでありますが、しかし、雪山でのお約束としては知らない者でも行き会ったらラッセルではパーティーと言う事な訳でおっさんが先頭に出た訳であります。
    しかし、後続の皆様は後悔した事でありましょう・・・この野郎は迂回するとか、ジグを切って上がると言う技は使わない訳です。
    ナニがナンでも最短距離で登り上がって行く訳でして・・・雪山では「男の直登・一本道」を旨とするのであります。
    手がかりの無い所ではピッケルを打ち込み、足場もキックステップ三段打ちで、ガシガシと登って行くのであります・・・而してその実態は?ゼイゼイハーハー、汗ぶったらし、殆ど息も絶え絶えでありまして迂回したりする頭が働かないのでありました。

     
    もうずく尾根に・・・しかし行く手には雪庇が

     夏道がジグを切ってトラバースしている所を無理繰り直登して来たら先行の二人を振り切っちまいまして、変わって現れたのが後続していた単独の男性でありました。
    で、尾根に出るまでの厳しい所を交代でラッセルできたのでとても助かった訳であります。
    しかし、尾根に出るには2〜3メートルの雪庇を乗り越さなくてはならないんですけれども、崩れそうだったり被っていたりで良さそうな場所が見つからない訳です。
    で、雪庇沿いに横に行くんですけれども、雪庇ができると言う事はそれなりの地形と言う訳で、これもまた難儀した訳であります。
    それでもなんとか登れそうな所を発見して尾根に上がると、面白山やらの展望が素晴らしく、一息ついたのでありました。
    しかし、帰り道のここは大事だよな、うっかり勢いで下ったら見逃すよな・・・先週の赤布が残っていないか?と探したら一枚だけ発見・・・助かったぁ、と。
     
    まだ標高が低いんで雪と薮が鬩ぎあっています

     いや、尾根に出たら後は残雪ハイウェーをまっしぐらで時間が稼げると思ったのは大きな勘違いでありました。
    登山地図で見ると夏道で言う所の県境の峰に乗ったんでありますが、まだ標高が低いんで雪は安定しない訳です。
    ンじゃぁワカン履けば良いじゃん、と言うのはダメなんであります。
    ワカンなど履いて踏み抜いた場合は下に隠れている枝や笹に引っかかって足を抜くのが容易じゃない事になるのであります。
    なので、スボ足ではぬかるんで酷いですけれども、だからと言ってワカンも危なくて履けないと言う、腐れ雪特有の悩ましい状況なのであります。
    で、雪庇を避けたいと思えば薮に絡めとられるし、薮から逃れたいと思えば雪庇の危険に曝されると言う、これもまた意地の悪い状況なのでありました

    間倉山へ続くの稜線を寒風山方向へ曲がってすぐ、船形連峰が丸見え

     まず、登山地図で行くとアオノ瀬までで1時間40分というんでありますが、その手前の1000に満たないピークで既に2時間を費やしている訳です。
    で、寒風山の頂が望めたんでありますが、遥か彼方に見える訳です・・・二つもピークを上り下りすんのぉ?遠いなぁ、と。
    いや、船形連峰が後白髪山から本山までズラーッと見える稜線に出た所で、一緒に来た人は戻って行った訳です・・・正しい判断だったのかも知れない。
    しかし、おっさんは先に行く事しか考えていないのですが、それでも、日没の時間が延びている事を加味しても、一時まで歩いて着かなかったら諦めよう、と決めた訳です。

    いや、行くべき尾根の雪庇の様相が悪いんですよ

       さて、行くと決めたんでありますが、距離的には半分の所で2時間半掛かっている訳で、11時40分なんであります・・・後1時間20分で行けるのか?
    で、高い所から尾根筋を見ると張り出していた雪庇は随分落ちた模様で、何となく安全なようではありますが、所により落ち残ってぶら下がっている所などある訳で、迂闊に近寄るのもアレだよなぁ、と、用心する訳です。
    しかし、気温は調子良く上がって雪は腐ってズボズボだし、汗は流れるようでいつに無く喉は乾くし・・・心は折れそうででありました。
    こんな時には「巨人の星」を歌いながら行くと良いのであります・・・思い込んだら〜行くが男のど根性、であります。

    ピークを一つ越えるとまた、ヤバそうな雪庇の尾根が見えるのであります

     いや、参ったなぁ・・・1時までに着くのかよぉ?ドーせ撤退なら何処で引き上げても一緒なんだよな、などと弱気になりつつも、足は止めない所がおっさんの良い所であります。
    で、踏み抜きで体力を削がれ、雪庇を避けて下っては登り返してと、はっきり言って不忘なんか屁みたいだな、と思う程に体力も技術的にも寒風山の方が厳しい訳です。
    まっ、3月の末頃、もっと雪が締まっていた方が楽なのだろうとは思いますが、その頃にまかり間違って新雪になんか出会せばそれはそれで大変だと思う訳です。
    と、言う事で、標高僅かに1117メートルの寒風山は雪山としては手強い相手であるなと、おっさんは認識した次第であります。

    大した事無いとも見えるし、ヤバイとも見えるし

     遠くに見えていた山頂がグッと近づき、登れると言う確信が湧いて来た訳です、が、足取りはやっぱし重くて遅いのであります。
    で、一山超えて次の稜線が見えると、漏れなく雪庇が付いて来る訳でして、この稜線で吹雪かれたらドーする?歩けるかぁ?などと一人で脳内会話などしながらも、亀のような歩みは止めない訳です。
    ウヒョォーあれが山頂だよな、と見当をつけたピークはただの雪庇なんであります・・・夏に来ると平らな山頂が広いんだけど、まっ、あれで良い事にしよう、と、最後の踏ん張りを効かすのでありました。

    寒風山山頂を望む

     で、12時49分、3時間半掛けてやっとの思いでたどり着いた山頂は・・・ナンだか拍子抜けするただの雪庇の高い所でありました。
    ああ、赤布が下がってる、やっぱし冬場に誰かが登ってるんだなぁ・・・それにしても夏とは打って変わった良い展望でありまして、船形連峰は山形側も宮城側も全部見えます。

     
    山頂に立つおっさん。

     山頂の気温は6度なんですが風が無いんで暖かく感じます。
    ここで昼飯だったら気持ちよいと思うんですが、時折吹く風は何となく冷たい訳で、少し下って船形山の眺めの良い所に陣取りました。
    で、ビールで給水をし、カップ焼きそばなど食い腰を上げたのが1時35分でありました。
    下りの目標は2時間・・・大変なのは沢沿いの急斜面、で、あそこは勝負して沢沿いに降りちまうぞ、と心に決めてガシガシ下った訳です。
    いや、やっぱし病み上がりで参っていたんでありましょうか?重力が味方してくれる下りは楽チンで快適なのであります。
    調子来いて雪庇に寄りすぎないようにしながらも、なるべく直線的に行こうと「男の直下降・一本道」を決める訳であります。
    しかし、登り返しでヒーヒー言うもののかなりの早さで降りてきまして、間倉山との尾根の交わる所まで1時間ちょいで来た訳です。
    すると、朝に行き会った二人組とまた出会った訳です・・・で、話しを聞くと間倉山に行って来たのだとか。
    へえっ?・・・地図で見るとここから300メートルも無いんですけど・・・相当ゆっくり昼飯でも食ったんでありましょうか?
    で、朝と同じで道を譲られたので先に降りたんでありますが、おっさんが車を走らせた時にもまだ二人は降りて来ていませんでした。
    さて、沢の上に出まして思案しました・・・沢は朝よりもヤバくなっているぞ、と。
    そんな訳ですぐに沢に出るのは避けて少しトラバース気味に下ってから、ここなら良かろうと言う所で沢沿いに降りて車に戻ったのであります。
    到着時刻は、3時35分・・・二時間ピッタシでありました・・・いやぁ、今時分の寒風山は低山だからと舐めて掛かったら大変ですよ。

    ホントーに疲れました。


        この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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