写真入り・山日記

        

  Mt Ida(Milner Passから)(標高3926メートル)


     2012年06月05日 (火)  晴れ/曇り 


 いや、勢いで来ちまったものの、どこから手をつけたら良いものか、皆目見当がつかない訳です。
ちょっと考えてみて下さい・・・アメリカ人が船形山に登りたいと思って仙台空港に降り立ったとします。
で、レンタカーなど借りたとしますが、はたして、地図を片手に升沢キャンプ場の登山口にたどり着くのは容易でありましょうか?
そんな訳で、この度の遠征で一番難儀したのは登山口がどこなのかを探す事なのでありました・・・いや、ガイドブックには「ジョージタウンでハイウェーを降り県道32号を南へ向かい、最初のT字路から未舗装路を3マイル東へ」などと書かれている訳ですが、おっさんにはジョージタウンがどこに有るのか判らない訳です・・・地図の中から一つずつ探し出してみるのでとても面倒であります。
で、未舗装道路だとレンタカーは保険が利かない訳で、それもまた心配の種で、恐る恐る登山道探しをするのでありました。
などと書くとアレなんですけれども、アメリカの道路と言うのは割と大雑把と言いますか、そんなに込み入った曲がり道はない訳で、行ってみれば大体何とかなるのが実情なんでありますが・・・。


トレールリッジの有料道路を通ると貰える地図をあてにして登った訳ですが
 さて、コロラド ロッキー山脈国立公園の山を初めて登るのにどんな様子なのか皆目見当がつかないのでお手軽なのから攻めてみたいと言うのが偽らざる人情な訳であります。
で、ガイドブックを参照するのでありますが、英語で良く分からないのであります。
まず、気分的に、ガイドブックで星四つを狙った訳ですが・・・星三つ辺りが「普通」で、星四つは「やや手強い」になるのかと思うのであります・・・いや、今居るテント場から近くて程良い山と言うのが見当たらないと言いますか・・・本読んでも良く分からないと言いますか・・・もっともらしい理由を述べますと、この山へ続く道はコンチネンタルディバイドとか申しまして、太平洋と大西洋の水を分ける分水嶺を歩く事になっているらしいのであります。
やっぱし常に東北の脊梁山脈を歩いているおっさんとしては、太平洋と大西洋を分ける脊梁山脈と聴いては外せないと言う事で選んだ次第であります。

 前説おしまい。

 

夜明けとともに起きて準備です・・・車の窓が凍ります。
 朝飯に日新焼きそばなど喰って出発であります。
トレールリッジロードを北へ向かって、Milner Passの駐車場の入り口から入る訳です。
しかし、この道は本来はMt Idaへ向かう登山道ではなく、別な湖へ行く道な訳です。


いい感じの、何処か、テレビなんかで見たような景色であります。
   で、スターとから雪でして、先が思いやられるなぁ・・・と、思ったのは間違いでして、森林限界と申しますか、ツンドラ地帯を超える3500メートルまでに雪が多く、その上は樹林が無い為に雪解けは下より遥かに早く良い塩梅なのであります。
しかし、雪で登山道の踏み跡も何も消えていておっさんはどこへ向かえば良いのやら・・・大雑把な地図にコンパスをあてて適当に登ってみる訳です。


分水嶺の看板であります。

 まず、おっさんの気分が高揚しているからか標高が高い事はあんまし気にならない感じでありまして、3000メートルから3300メートル・・・おお、もうすぐ富士山だな、などと割と気楽に高度を上げて行く訳です。
最初の取り付きがとても急で・・・いや、登山道が判らないので雪面を直登して来たからだと思うんですけれども、最初だけ急でしたがあとはナンだかハイキング的な緩い登りが延々と続く訳です・・・見晴らし抜群で景色が良いので飽きませんが。

駐車場の前だけ足跡が有りますが少し進むと無くなります。

   いやぁ、それにしても明るい山であるなぁっ・・・ほんと、人の気配が皆無で、動物の気配がムンムンであるな、大自然であるな・・・頼むからグリズリーだけは勘弁してくれよ、と。
あとでレンジャーから聴いたんですけれども、熊の被害と言うのは「ブラックベアー」でありまして、人間が食料をだらし無く放置するから熊がよって来るんだと。
で、グリズリーはロッキーでは遭いたくても滅多に会えない程に減少していて、絶滅危惧種であるのだとか・・・しかも、とても頭が良く臆病なので人の気配がしたら絶対に近寄らないのだとか・・・やっぱしなぁ、何処も事情は同じなんだなぁ、と。


注意書きが有りましたが、何分にも英語なので良く分かりませんでした。

 そんな訳で注意書きの看板には、ここから先はクライマーの世界でトレッキングじゃないからな、行くなら装備と覚悟を決めて行けよ、的な事が書かれていたのではないかと言う看板などに励まされ、おっさんは取り敢えずクライマーであるからして、行くべきだよな、と前に進んだ訳であります。


針葉樹林帯の木の背丈がとても低くなると、辺りの山が近くに見えて来ました。

 ほんと、登り口から暫く雪が邪魔だっただけであとはなんて事無い普通に登山道でありまして、距離の割に標高を稼がないのでとても楽であります。
時折見た事も無い高山植物に目を奪われるのでありますが・・・名前などは判る由も無いのであります。

 

タイマーで自分撮り・・・ロッキー山脈に「おやじ現れる」・・・いつものスタイルであります。

 しかしアレです・・・トレッキングロードであれ登山道であれ、標識は要所にしかない訳で、日本のようにご親切な赤ペンキや先人が、ここは次の人が間違いやすいだろうから一つ注意喚起の赤布でも、と言うのは皆無であります。
取って良いのは写真だけ、残して良いのは足跡だけ、のお約束でありますから赤布なんて言語道断なのかもしれません。


またもや柴刈りおやじの自分撮りで恐縮であります。

 ホント、ロッキー山脈の眺めは雄大なんでありますが、現実的に歩いている感覚ははっきり言って泉ヶ岳でありまして、まっ、標高が高いんで空気が薄い分多少息苦しいかもなぁ、と言う感じで、顔を歪めて登って行く訳であります・・・上記の写真で下を向いているのはポーズでは有りませぬ。 コレ以後、総ての山で足下だけを見つめていたように記憶しているのであります・・・いや、辛くは無いんですけれどもね。

奥の方にチョコッと見えるのが目指す山頂であります。

 地図は持ってますしデンバーの街で買い求めたGPSも持っている訳で、道案内に不安は無いはずなんであります・・・が、しかし、そこがアメリカと言う事なのでありましょうか? 買い求めた地図もGPSにも、途中から登山道の表示が無いのであります・・・道はこんなにしっかりあるのになぁ、と。
で、道を辿って歩いていたんですけれども、やがて踏み跡が薄くなったなと思ったら、もはや判然とする踏み跡は無いのであります。
うーむ・・・コレまでの道はピークは避けて巻き加減であったけれども、ここからは全ピークを越えつつ尾根通しの安全策で行きますか?と作戦を変更であります。
いや、GPSはMt Idaの山頂は表示しているので行くべき方向は判ります・・・概ねあっち、と。


いや、赤布なんか残しちゃなんねぇ、と言うのは承知なんですが・・・帰り道にここはどうしても、と。

  どうもロッキーの山と言うのは雪が落ちる方だけが削られて壁になっているような傾向であるな、と言う事で、反対側は結構茫洋として広いのであります・・・そうですねぇ、茫洋感は後白髪山みたいですかね?
そんなもんでありますから、稜線通しのコース言うのがとても変な感覚なのであります。
少し寄りすぎると千尋の谷・・・しかし、こっち側はどこまでも続く荒涼たる岩の瓦礫の原・・・雪蝕された方だけ落ち込む、と言う事は、この山はもっと昔し、大昔はとても高い後白髭のようであったのだろうな、なんて事を思いながら・・・それにしてもアレこそは山頂かと思うとまた違うピークが現れるしつこさは・・・飽きるぜ。


おおっ、やっとそれらしいのが見えて来ました・・・山頂です・・・たぶん。

 標高差で900メートルしか無いのに歩く距離は8キロと言うと、急な登りはほとんど無いと言える訳です・・・日本の山では標高差900を3〜4 キロで登る、なんてのは普通に有る訳ですから。 この山が体力的には大したものを要求して来ないのは推して知るべし・・・と、思って帰ってから乗り越したピークの総標高差を合計したら、なんと、1300メートルになっていた訳であります。
うーむ・・・確かに登山道と思しき道は全てのピークを巻いていたのが頷ける、と。


おやじ、1ミリでも高い所に登ろうと足掻いています・・・山頂が広くてどこだか判然としなくて。

 やあやあ、ナンだカンだ言ってるうちに着いちまったなぁ・・・いや、山頂がだだっ広くてどこが最高点やら判らないんであります。
取り敢えずGPSがここです、と宣うものですから、まっ、ここなんだろうな、と言う事で納得した訳でありますが。


こっちのお写真の方が山に登っている感じが出ていると思うんですが・・・いや、向こう側は1000メールと程落ちてます。

 山頂にたどり着いたのが昼頃でありましたが、少し前から雲が湧き始めているのがとても気になるんであります。
ナンとなれば、デンバーに到着した日から毎日確実に午後は黒雲がわき強風と雷が襲って来るのであります・・・まっ、午後5時過ぎなんで未だ大丈夫だろうとは思うんですが、しかし、標高が標高で隠れる場所が無い訳で・・・ここで雷はヤバすぎだよなぁ、と、流石のおっさんもビビる訳です。

 

富士山より高けど・・・出来れば4000に届いて欲しかったよな・・・まっ、実際3926なんだけど。

   そんな訳で人っ子一人居ない殺風景な山頂でありまして、しかも、思ったよりも感激も少ないんで、ンじゃぁサッサと降りちまうか?と言う事で腰も下ろさずに下山開始であります・・・いや、雲が気になっていると言うのが偽らざる気持ちでありまして・・・山で怖いのは、冬は雪崩、夏は雷でありますから。


この雲をなんと見るか? アメリカの雲には馴染みが無いので用心に越した事は無い、と。

 曇って、集まり出すと早いんですよ・・・沸き出す条件が揃ったら一気ですから。
陽射しが無くなってからではもう遅い訳で、動きが不穏であるなと思ったら要注意であります。
で、この時、陽射しは未だ強いんですけれども風が強くなり、そして、ナニよりも気温が下がったのであります・・・多分ヤバイとおっさんの警報が鳴っていました。


歩きながらの昼飯です・・・膨らみ具合が標高を物語るのであります。

 登るのに楽な山は降りるとなったらもっと楽であります・・・傾斜が緩いんで膝にも脚にも優しいのであります。
下山に向かったら、山頂付近の岩場も比較的安定したもので気持ちよく踏んで行ける訳です・・・凄く早いのであります。
で、ありますが、茫洋とした山容でも登るときは山頂を目指せば良いので行く先は簡単に掴めるのですけれども、しかし、下山となったら話しは別です。
俺っ、どこから来たんだっけ?・・・どっちへ向かえば良いのだ?となる訳です・・・が、GPSが帰り道を示してくれるので実際は問題無いのですけれども。
しかし、岩場を飛びながら降りている訳で、画面を凝視しながらと言うわけにはいかない訳で、時折見当外れの方向を修正しながら降りて行くのでありました。


いや、暗雲が迫っているのに花なんか取ってる場合じゃないと思うんですけど・・・可愛くて。

 こんな所、歩いた記憶が無いんだけれどもなぁ・・・と、思うとずっと上のピークを乗り越して行っていた訳です。
で、登山道の方は巻き道として割とはっきりしていたのにも関わらず、おっさんが上を目指して岩場に入って行くもんで踏み跡が消えちまうのであるな、と言う事が判明したのであります・・・下ばっかり向いているんだけれどもなぁ・・・不思議です。

 

ロングホーンシープ・・・角の長いヤギ・・・登山道を歩いて来ておっさんを追い抜きました。

 この後、4000メートル越えを4座〜5座登ったんでありますが、おっさん的にはこの山が一番好きかもしれません。
この先は登山者の領域だかんな、の看板から先は踏み跡も判然としなくて人の入りが少ない事を伺わせていた訳ですが、やっぱし、中途半端な標高が災いして・・・言うなれば、おっさん地方の山で言うと寒風山とか、小東岳みたいな地味な存在野山なのでありましょう。
とても静かで、だから自然は豊かに守られている感じの、とても和みの深い山で有りました・・・どちらかと言うと花も多く、女性的な山と言うのもおっさんの好みであります。


おっさんを全く意識しないのであります・・・親子?一家?

 で、樹林帯までまだ3キロ以上・・・時間にして1時間は見なくちゃ、と言う所で雷が鳴り出しまして未だ遠くですけれども閃光も出ちまった訳です。
しかし、風向きを見ると今の所はこちらへ直行して来る風ではないよな、と言う、少し楽観も出来る感じなのでありますが・・・しかし、アメリカの風には馴染みが無いモノですから、読みは当っているのかドーか?


こいつらもアレです、殆ど人間を無視している訳で、登山道にウンコ垂れ放題です。

 と、言う事で、樹林帯に逃げ込んだら黒雲がすっかり頭上を覆って雷が鳴ったんでありますが、そこまでてありました。
風雨にはならず、テクテクと泉ヶ岳の水神コースの下山のような感じで暢気に下れたのでありました。
しかし、最後の詰め・・・駐車場に出る所で雪に阻まれまして思うように進めなくなっちまいました。
いや、もの凄く柔らかい雪でして時に腰まで埋まっちまうんであります・・・いや、朝は未だ締まっていたのでありましょう・・・思わぬ所で時間を食い苦戦しました。
で、面倒くせぇ、と、雪面を真っ直ぐ突っ切って降りた所が駐車場の真ん前では有りましたが、そこには立ち入り禁止の柵とロープが張り巡らされている訳で・・・駐車場にいた金髪どもが驚きと顰蹙の目をおっさんに向けていたのでありました。

 そんな訳で、往復で6時間・・・ドキドキしながら脚を踏み入れた初のロッキーの山は、ナンだか船形山の周辺の山とあんまし相違もないよな・・・まっ、高いと言うだけの事で、それだけだな、と言うのが偽らざる感想で有りました。
で、イタチはやっぱし石の上に糞をするし、ヤギだか羊だか、あいつらの糞はやっぱしチョコボールだし・・・山はやっぱし世界中山なんであるなぁ・・・ナァーンて事を思って一発目終了です。    アメリカでも、やっぱし山は良いもんです。


     この話 完


山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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