写真入り・山日記

        

  Grays Peak(標高14270ft 4350m)Trreys Peak(14267ft 4348m)


     2012年06月09日 (土)  圧倒的な 晴れ 


 本日は日本を出る時から登るぞと決めていた山であります・・・何故に登ると決めたのか?・・・大手のアルパインツアーと言う所のロッキーツアーで一般人が登っているんでたぶんおっさんでも登れる山なのであろうと、只それだけの理由で有りました。
いや、そうはおっしゃいますが・・・へっ?何も言っていない?・・・まっ、事前情報がネットで買った英語のガイドブックだけでありますから、どの辺が難しくてどの辺がお手軽なのか皆目見当がついていないと言うのがアレな訳です。
そんな訳で、ガイドブックでも「moderate=モデラート」意味は直訳すれば「穏やかな」でありますから、まっ、標高以外の事で手に余ると言う事は無いだろうと。

 しかし懸案は有りました・・・ガイドブックではずーっと下のパーキングに車をおいて登るとされているんですけれども、ナショナルジォグフィックの登山地図ではトレールヘッド(登山口)まで車で上がれるとなっている訳です。
しかし、未舗装路で時に「Washboard」=「洗濯板」と言う文言も読み取れる訳であります。
いや、レンタカーの保険はフルカバーで掛けたとしても、一般車両は未舗装路の事故は保険適用外なのであります・・・四駆を借りれば良いらしいのでありますが、料金がガビョーンと跳ね上がっちまう訳で・・・まっ、多分もう行かないけれども、もしもまた行った時には多分四駆を借ります・・・いや、山道登って行っても心配で落ち着かなくて、つい弱気になっちまうんであります。

 と、言う事で、高速を降りたら西へ行けだのティー字路は東へ登れだの、東西南北の感覚がないおっさんに無理難題を吹きかける訳でありますが・・・しかし、アメリカの道はアレです、恐るるにあたらず、であります。
行ってみると、そこしか曲がり様が無いと言う単純さでありまして、まっ、普通に方向感覚が働く人は多分迷いません。
で、これもアレなんですが、どんな田舎道でも案内板が立っていて親切な訳です。
で、登山道へ入る近くの紛らわしい枝道で入っちゃ拙い道はチェーンでロックされているし、一般民家へ続く道の場合は「この先は俺んちへ行く道」と明記されていたりする訳です。


 前説おしまい。


これがナショジオの精密地図です・・・雑把な等高線にいい加減なトレールロードの線であります。
 そんな訳で高速を降りて山道へ向かいますと、今までに無いコンディションの良く無い道な訳です・・・洗濯板じゃ無いべゃ・・・穴だらけって言わねぇか?などと、しかし、おっさんも林道には馴れている訳で、タイヤを片方だけ残しつつ、ジリジリと登って行ったのであります・・・途中で夜が明けまして、見えが良くなって助かりました。

   

ここまででした・・・いや、看板はドーでも良かったんですが、普通車では越せない穴が・・・。
 おお、ここは何処だ?・・・登山口まであとナンボだ?なぁーんて考えつつ車を道路の脇に寄せて歩き出すと、夜明けとともに車がドガチャカドガチャカと登って来るのであります・・・ああ、土曜日だもんな、と。
で、Quayelとか言うクリーク沿いに登って行く訳ですが、ここはその昔のゴールドラッシュ時代にはそれなりに栄えた地域らしく、そんな名残がそこはかと無く漂っている訳です。
道々、川に近い所に小さな山小屋風の家とも言えない小屋が掛かっているんですけれども、未だに砂金なんか採ってる訳じゃないんでしょうけど、気になりますが、尋ねる人も無く・・・。


谷間は暗いんですが高い山には陽が当たって輝き出しました・・・月が、侘びを誘うのであります。
   いや、それにしても、アメ車のピックアップトラックの四駆がグワングワンと唸りながらもの凄い埃を巻き上げてドンドコと登って行く訳です。
その脇をおっさんはテクテクと登山道まで・・・GPSが確かであればあと1マイル・・・1.6キロ。
この野郎めら、乗せて行こうと言う気にはならねぇのかな・・・まっ、おっさんが車でも多分乗せないけど。


アレに見えるは登山口の避難小屋? およそ2.5キロに30分・・・標高差200m・・・全然快調。

 本日の山はなんたってモデラートでありますから・・・標高が4000を越すと言うのがナニですけれども、実質的な標高差は登山口からでは1000メートル程度・・・距離は往復で13キロ・・・まっ、お手軽と言いますか、丁度良いと言いますか・・・まっ、臆する山ではない訳です。
しかし、その考えは甘かった・・・まっ、色々有って・・・いや、大した事は何も無いんですけれども、結構参った事になるのでありますが。

 

いや、見たまんまのハイキングコースであります・・・なだらかです。

   駐車場は既に満杯・・・と、言っても20台程度でありましょうか。
いや、しかし、登って行った車よりも随分多いな・・・おっさんよりも早く来た車も有るとしても、泊まりの車も有るんだろうな、と伺わせる訳であります。
ナンとなれば、聞いた話しでアレなんですが、この時期フロントと呼ばれる位置の山はとても安定した天気に恵まれるんで、「山頂泊」が流行なんだとか。
で、この山はそれの対象としてとても賑やかなのだとか・・・いや、おっさんの聞いた話しですからね、判りませんけど。


正面が Graysで右がTorreysです・・・見た目よりも遠いんだわ、これが・・・おっさんの縮尺感と合わないんだよね。

 ホント、モデラートなんであります・・・歩いても歩いても大して標高は上がらないんで楽っちゃぁ楽なんですけど・・・しかしなぁ、登山なんだから標高上げなくちゃ山頂に届かないんだけどなぁ・・・ドーなってんだろうなぁ?・・・ああっ!!!!そう言う事かぁ?と、大体読めて来た訳であります。
しかし、雄大な景色ではあるんですけれども、どこか箱庭的と言いますか。絵画的と申しましょうか・・・ワイルド感とか荒々しさと言う点では北アルプスのが上なんじゃないかなぁ・・・厳しいって言えば早月尾根を一気に剣まで登る方が何倍かキツイしなぁ・・・まっ、モデラートだからな、と。


Torreys Peakへの尾根を背景に、まだまだ余裕です・・・まっ、ここまでなんですけどね、笑顔は。

 老若男女・・・爺様もいれば婆様も居るし、子供も居れば犬も居るし、若い娘も居る・・・おっ、これは報告に値すると思うんですけれども。
おとっつぁんが娘二人を連れて登って来ておっさんを追い越した訳ですが、これが、娘が別嬪でして・・・で、おっさんを追い越す時に「グッ モーニン」なんて笑顔を向けてくれる訳です。 まっ、どっちかと言えば姉の方が好みなんですけれども、若さでは妹が勝ちでありましょうか? で、この時、いよいよジグを切って本気の登りが延々と続く佳境に入っていておっさんは超苦しかった訳です・・・そこで一服の清涼剤、とも言うべき笑顔を頂戴した訳であります。
しかし、一番言いたいのはそんな事では有りませぬ・・・いや、娘がふたりともピッチリしたスパッツ・・・今時はレギンスと言うのですか?アレを履いている訳です。
いやぁ・・・追い越されて後から眺めたケツの見事な事・・・やっぱしアメリカには20年早く来るべきであったと、しみじみ思ったのでありました。


キツくなって高度を見ると大体4000を超えて居ると言いますか・・・正面Torreys Peakです。

 ここから標高差で300m強を一気であります・・・まっ、直登は出来ないアレなんで・・・いや、傾斜もナニなんですけれども、ガレとザレ場でしてずり落ちるし落石起こすし。
で、スニーカーなんかに水もボトル一本とか言う軽装の人はこの辺で大体が戻って行く訳です・・・岩陰に伸びている奴も居ました。
おっさんの推測なんですが、コロラド州は全面的に既に高地と言いますか、2000mくらい有る訳です。
で、そんな所で生まれ育っていると既に高度純化は為されている上に、肺の最大酸素摂取量も相当に鍛えられていると思う訳です。
なので、喘いでいる人の姿があんまし見られないのであります。
で、他所から来た人なのか軟弱者なのかは判りませんが、喘ぐような人達は随分下であっさりと諦めている様に見受けられる訳です。
なんたって直ぐ傍は高地トレーニングで世界的に有名な「ボルダー」の街ですからね・・・凄いっすよ、真っ昼間の炎天下、間違いなく世界戦クラスだろうなぁと言う自転車がドガチャカと走っていましたから。

 

いや、喘ぎつつ、ジグを切っている道で更に小刻みにジグを切り・・・たどり着いた山頂。

 山頂の少し手前から強風が吹き出しまして、毛糸の帽子が欲しいなぁ、と。
いや、手袋は少しの吹雪程度に耐えられる物と、身支度も少々の寒さに耐えられる準備をして来ているのでありますが、頭の防備だけすっかり忘れちまった訳です。
周りの人達は見かけは軽装なのですけれども、頭は毛糸の帽子など被っているし・・・馴れてんだなぁ、と言う感じであります。
岩だらけの山頂は下から見たよりも広く無く、とくに風下側の良い所は皆誰かが陣取っている感じで落ち着かないのであります。
いや、絶景を眺めているにも寒すぎる訳で、記念撮影が終わったらソイジョイを喰う間もなくTorreys Peakへ向かうしか無いのでありました。


Grays Peakから見たTorreys Peakは高く見えてたんですが、時計では10m程低く出ておりました。

 いや、Grays Peakに登った人の2〜3割がTorreys Peakに向かうんでしょうか?
最初からこっちへ向かう人も居たりして、まあ、様々であります・・・しかし、登ると言う事ではTorreys Peakの方が登り応えが有ると申しましょうか、しんどい訳です。
まっ、アレですか?最初にあっちの登りで参っちまっているんでそう感じるのかもしれませんが、近くに見えたのに1時間10分もかかっちまっている訳です。
しかし、辛い事ばかりでは有りません・・・今朝方のあの娘らが山頂での休息の後またもやおっさんを追い越したのでありますが「ハローアゲイン・・・」とか言っちゃって、また見事なケツを向けて登って行くのでありました。
まっ、こんな風に書いてますけど、ホントーは一瞬ケツを見て後、ズーッと下を向いて黙々と登っていたんですけれどもね・・・いや、ナンだかこの日は辛かったんであります。


Torreys Peakの山頂で笑顔を作っているつもりが、歯を食いしばっちまっているおっさんです。

 山の雰囲気としてはTorreys Peakが随分上に感じると言いますか、山頂はトンガリで狭く、そこから続く稜線は岩場で、シロートが手を出せない域である事が判然と伺えるのであります。
で、人も少なかったんで風下の岩陰に座り込み、ソイジョイを喰いBCAAのドリンクなど飲みしばしのんびりしたのでありました・・・しかし、尻を下ろすと根が生えちまって立ちたく無くなっちまうんですよ。


暢気な顔をして・・・人が近づいても逃げないので走った姿は見られませんでした。

 さて、本日のバテの原因は後頭部への直射日光であるな、と、おっさんは自分なりに分析した訳です。
それと、気温の低さに騙されて水分補給を意識的にするのを忘れ喉が渇いてから給水すると言う愚を冒していた訳であります。
うん・・・高度純化すると言う事は、赤血球が濃くなると言う事で、血が濃くなっちまうと言いますか、水を足してやらないと流れが悪くなる・・・そんな事を倣った記憶が有る訳ですが・・・元来水を飲まない方なもんですから、やっちまったようであります。
しかし。下山に向かって高度が下がると、ホント、100mも下がっただけで俄然生き返っちまうと言うのも覚えた訳です・・・高山で参ったら下がる・・・鉄則かも知れないです。


花の向こうはTorreys Peakです・・・花の名前は、当然知りません。

 で、下って来るに連れ元気になったのもつかの間、今度はある一定の標高から気温ががんがんと上がって、おっさんの危うくなっている後頭部を容赦なく照りつける訳です。
まっ、若い人は知らないでしょうけれども、ジュリアーノジェンマが砂漠で生き埋めにされてハゲタカが空を舞っている、西部劇の一シーンを思い出すのでありました。
救いは・・・飲み水が豊富であった事、です。


雪解け水が小川になって流れています、が、飲んじゃダメだと書かれていました・・・奥の山はTorreys Peakです。

 さて、いい塩梅下った所で奇麗な水の流れる小川に出会しました・・・朝は氷が張っていた所でした、が、今は水の流れがおっさんを誘っている様に見える訳です・・・ひと風呂浴びて行け、と。
いや、ホテルを出てから既に5日・・・シャワーは未だ浴びられていない訳です。 温水シャワー付であるはずのキャンプ場のシャワーが止まっちまっていて大誤算でありました・・・いや、水道で頭を洗ったり身体を拭いたりはしましたけど。
で、前後に人影がない事を確かめ、おっさんは良さげな石を跨いで川に頭を突っ込みゴシゴシとやった訳です。
序でにシャツを脱いで水に着け身体を清め、さっぱりとした訳です・・・いや、切れる様に冷たい水と、照りつける陽射しのハーモニーと言いますか、頭はキンキンといたい程に冷え、シャツを脱いだ背中がジリジリと音も出ようかと言う程に焼かれている訳です。
水で拭った顔が、数日間で堆積した油でニュルニュルしたのには驚きました・・・きっと、おっさんは臭いんだろうなぁ。
あの、ケツの見事な娘達におっささんの臭さがバレちまっただろうかと、とても居たたまれない心持ちになったのでありました。

 さて、下がるに連れ気温が上がり歩くのが嫌になって来る訳です・・・やっぱしアメリカでも午後二時過ぎが気温のピークのようでありまして・・・いや、日没が九時近くなんで高温の時間も長く続くんですけれどもね。
で、登山口からまた2.5キロを余計に歩かなくちゃならないと言う気の重さが余計に足を引きずる訳でありますが・・・行かなくちゃダメなんですね。

 しかし、アメリカには神様と言うのが居るのかどうか? まっ、おっさんは仏教徒なんですが・・・。
おっさんがテクテクと歩いていると、車が一台停まった訳です・・・なんとぉ〜、それはあの、美人姉妹のおとっつぁんの運転する車では有りませんかぁ。
車は下に有るのかぃ?と、聴いて来まして、日本人かな?なんて事も言いまして・・・まず乗れや、と、来た訳です。
いやぁ・・・おっさんは躊躇しました・・・日本男児は臭い、と思われては堪らない訳で、末代までの恥となってしまうんじゃないかと、危惧した訳であります。
で、おっさんの一瞬の躊躇いを見て取ったのか、妹の方が「カモーン」とか言ってドアを開けてくれた訳です・・・おっさん、吸い込まれる様にふらふらと乗り込んじまいました。
うわぁ〜良い臭いが充満しているぅ・・・俺っ、臭いんだろうなぁ、と、膝にザックを抱えたまま、小さくなって乗っておりました。
その間、娘が・・・熱いから歩いて降りるのは大変だよねぇ、とか、日本の何処から来たの、とか、仙台と言ったら津波の所だぁ、とか・・・。
しかし、拾ってもらったのは程なく車に近い所であっため、夢の様に時間は本の一時でありまして・・・嗚呼、アレは現か幻か?
ひょっとするとアレは、炎天下の道を歩いていたおっさんが朦朧とした意識の下で見た厳格であったのかも知れませぬ。

で、あとで地図から歩行距離を弾き出してみたら・・・なんと、往復で18キロも歩いてたんですものぉ・・・で、ついでに累積標高差を拾ってみたら、1400メートル近いんだものぉ・・・思ったよりキツかった訳ですよ。



   いやぁ・・・アメリカでも、やっぱし山は良いもんです。



     この話 完




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