よたよたと、山登り


    No.132

       

    船形連峰 保野川

         08月16日 木曜日 晴れ/曇り 

     

    山に穴を開ける・・・?


       いや、体調もあんまし良く無いし、大人しくしていようかとも思ったんですけれども、先日買い求めちまった「ジャンピングボルト」の試し打ちをしたくてウズウズしていた訳で、ンじゃぁ行くならやっぱし当初の目的で有ったあの滝のあの場所のあの岩に打ち込んでみるしか無いべな、との一途な思いで出向いたのでありました。

     そんな訳で朝飯を食って、愛車の「カブッチ」に股がって家を出たのが7時30分・・・旗坂から小荒沢林道経由で大滝キャンプ場に着いて保野川に降りたのが9時05分でありました。
    天気はまずまず・・・しかし頭上の雲の足が早いのが気になりますが、まあ、保野川ですからね・・・増水ったって知れてるでしょうし、逃げようと思えば、そこにもここにもあそこにも逃げられる訳ですから、と、気楽でありました。

     炎天下でありまして沢の中を無闇にジャバジャバと行くのが気持ち良く、石など拾って飛んで行くのではなく、ホントにジャバジャバと沢の真ん中を漕いで行くのでありました。

     あっという間・・・ホントに15分も行くかどうかでナメ滝でありまして、次がおっさんが勝手にF1と名付けている3〜4メートルの滝であります。
    で、それを越してヒョイと曲がるとお目当てのF2で、本日の穴開け対象の滝であります・・・ここまで30分ですか?

     今時のクライミングや登攀の風潮と言うのが自然志向であり、昔のような人口登攀は時代遅れだと言うのは知っています。
    プロテクションもナチュプロで穴など開けないと言うのは、こんな時代遅れのおっさんでも知っている訳です。
    しかし、チョットだけ言わせてもらえば、フリークライミングのゲレンデだってボルトは打たれている訳で、安全の確保はされている訳です。
    下手でも登りたいし、独りでも登りたいと思う時に、最低限の安全確保にジャンピングボルトを一本入れて置きたいと望んで岩に穴をあけるのは、それでもやっぱし、おっさんのエゴなのでありましょうか?

     と、まあ、もっともらしい言い訳などしつつも、本音は、ナジョなもんだかブチ込んでみたい・・・これがホントの気持ちであります。
    で、一人で登る時にはビレイヤーが居ないんでロープの一端は下に結んで行かなくてはならない訳です。
    しかし、F2には結んでセルフを取れる適当な岩や木が無いのであります・・・無ければ困るっチャ、と。
    そんなもんでまずは、下でロープを結んで確保するポイントとして、二本だけ買ってみたRCCタイプをブチ込んでみますか?と、あんまし水も掛からない端っこの方でトンテンカンテンと始めて見た訳です。
    いやぁ、岩にキリを叩いて打ち込んで穴をあけると言うのは想像しても大変だろうなとは思っていた訳ですが、想像以上に穴なんか開かない訳です。
    先日笹木沢に行った折り、登攀隊長にジャンピングボルトってナジョして打ち込むのっしゃ?と尋ねると、開口一番「穴は中々開かねぞぉ」と宣われちまっている訳です。
    それでも、少しづつ回転を加えながらやるとよろしい、と教わったのでやってみる訳ですが、正直に申し上げて、穴も開かなければらちも開かない、としか思えなかった訳であります・・・いや、腕が痛くなるほどハンマーを振るっているのに穴どころか、岩に傷しか着かないんですから。

     いや、こんな事では日が暮れちまうぞ・・・本気でやっても二本打ち込むのは無理との判断で、ンじゃぁ本命の一本を全力で打ち込もう、と言う事に下次第であります。
    なので荷物を置いてロープと金物だけを持ってフリーで登って・・・いや、だから簡単に登れるんですってば・・・ですけど、万が一の時には叩き落ちるしか無い訳で、それの防止に一点、支点を取って登りたいと思っている訳です。
    ホント、普通に登っていればたぶん100回やっても落ちるはずは無いんですけれども、万が一は突然の不幸をもたらす訳でありますよ。

     そんな訳でいつもの所に支点を取ってロープを下げ、本日は10ミリを持って来たのでグリグリが使って懸垂で下がり、目論んでいた棚に立って足場を決め、穴開け工事を敢行したのでありました。
    いや、やっぱし下の時と同じ岩の感触でありまして鋼のキリと言えども岩に跳ね返され、遅々として工事は進まない訳であります。
    それでも、古の岳人はアブミにぶら下がり、凍てつく岸壁でこれをやったんだよなぁ、と、気を取り直しハンマーを叩き続けた訳であります。
    時間にして20分も叩いたでありましようか?・・・15分かな?・・・ヒョットすると10分くらいなのかも知れないな?
    いや、半分くらいまで入ったら感触が変わりまして意外と早く進んで行くような気がしたのであります・・・まっ、穴らしくなったんで錯覚かもしれませんが。
    で、これも登攀隊長に教わっていた訳ですが・・・何処まで打ち込むのかキリにテープを巻いて印をつけておく、と言う事であります。
    と、言う事で、テキトーに目見当で印のテープを巻いて来た所まで打ち込めたようなのでリングボルトを一つ取り出しまして、いよいよ打ち込んでみた訳であります。
    しかし、中に岩の粉かカスでも詰まっているのか思うように入って行かない訳です・・・止めぇ〜と言う事で行ったん引き抜いてみますと・・・ありゃぁ、割りピンだけ穴に残っちまったょ・・・ドーしよう?・・・しょーがねぇ、これを戻して打ち込むしか無いジャン、と言う事で、穴に向かってフーフーして少しでも粉を飛ばしてと思ったんですが無意味でありました。

     さて、渾身の力を込めてピンを叩き込んでみるんですけれども、ドーも浮いちまっていると言いますか、他所の岩場で見る頼りがいのあるしっかり感を醸し出さない訳であります・・・これにぶら下がるの嫌だなぁ、と、打ち込んだ本人が一番不安になっちまう次第でありました。
    ウーン・・・もっと叩き込まないとダメかぁ?で、ぶっ叩いていたら穴から小さな亀裂が走ったではありませんか・・・ありゃぁ、ダメだコリャ、と。
    しかし、指では抜けないし、真下方向へは良い角度で埋まっているんでトップロープを着けて安全を確保した上で梯子などぶら下げてテンションを掛けてみた訳です。
    おー・・・持つじゃん・・・墜落は止められるかどーか怪しいけれども、まっ、ダイレクトにグランドするよりはナンボか良かろうと言う感じになって、穴開け工事は一応終了と。

     取り敢えず下まで降りてザックを背負って登って、もう一度懸垂で降りて、ボルトにスリングを掛け、ロープで確保しつつ、スリングの距離・・・120センチを飛んでみた訳であります。
    おお、止まりやがった・・・で、ピンを良く見ますと、この一発でも緩みが増えた感じは無く、また飛び出して来た様子も無い訳で、少しは役に立つかもね、と言う感じじゃないかと思う訳です。

     で、もう一回、下からロープを引っ張って一人で確保しながらグリグリで登る、をやってみて、やっぱし一カ所止まっているのと居ないのとでは心理的にだいぶ違うよなぁ、と言うのを確信した訳であります。
    いや、他の人はたぶん指で押したら少し動くボルトなんて怖くて頼らないと思いますんで、邪魔だから抜いちまえ、とかやられそうな気もするんですけれども・・・まっ、その時はそれで、また打ちますから・・・嘘です・・・誰かが抜くと言う事は駄目出しされている訳ですから素直に認めちまいます。

     そんな訳で小一時間も遊んでいた訳ですがまだ10時半過ぎな訳です・・・ナンボなんでもこの時間に昼飯は無いよな、で、升沢小屋を目指して登る事に。
    で、ヒョットすると秋の気配が・・・と、言う感じがする静かな沢をのんびりと登って11時30分、升沢小屋着。
    途中でヘマして釜のヘツリでドボンなどしましてパンツまでびしょ濡れになりましたが、気温が高くてかえってそれが気持ちよいと言いますか、沢に入ったよなぁ、と言う実感が心地よいのでありました。

     升沢小屋では中に入らず階段に腰掛け、ビール片手にパンなど齧って昼飯とし、一眠りして1時少し前、下山開始・・・。
    朝は静かだった大滝キャンプ場は殆ど満車で、家族連れがバーベキューなどして遊んでいました・・・ああ言うのも良いなぁ、なんて横目で見ながら、「カブッチ」に乗ってトコトコと戻ったのでありました。


          いやぁ・・・山は良いもんです。


        この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


    ご意見ご感想は こちらで、承っております・・・


    INDEXに戻る 次のページへ