よたよたと、山登り


    No.66

       

    船形山 大滝キャンプ場〜保野川源流〜升沢小屋〜三光の宮〜大滝キャンプ場

       滝を登りに行った・・・?

     7月20日 晴れ

     一年振りの沢登り・・・ヘルメット被ってぇ、ロープもってぇ。

     毎度、毎度・・・まいどぉー、の船形山であります。
    ホントだねぇ、今年はおっさん船形山が多いねぇ・・・まっ、足の具合との兼ね合いも有って遠くの山なんかも行き難いと言う事情も相まって、身近手近の船形に集中するのは当然ですね。
    で、この度は、これも、またまいどぉー、の千葉B氏とY譲のお誘いを受けての山行でありました。

     通れねぇかも知れないなぁ?と言いつつ、通れる方に期待を掛けて旗坂キャンプ場に集合したんでありますが、小荒沢林道への侵入口は工事中の看板とともにガッチリ閉鎖されていた訳であります。
    んじゃぁ、しょうが無いねぇ、と言う事で色麻町から大滝キャンプ場へ行きましょうと言う事になり、一度船形山を下りて麓の農道へと回った訳であります。
    千葉B氏の車を追跡して行ったんでありますが、人様の家の軒下か?と言うような農道やら、戦車が道をブロックしている道路やらを抜けまして、思いの外早く大滝キャンプ場到着でありました。
    ちなみに戦車と遭遇したのは、王城寺原の自衛隊の演習場の中を走って行ったからなのでありましょう。
    林道の入り口で車を一台にまとめて、おっさんらは山道に車を大滝キャンプ場へと急いだのでありました。

     結構な距離の林道を走って駐車場に到着すると、まさかと思う程に車が沢山居る訳で、満車でした。
    で、マイクロバスでやって来た一個大体の年配者のグループなども見かけ、こんな山の中まであの悪路をやって来る物好きの多さに驚いたのでありました。
    要するに、遠回りして来たので出遅れちまっているおっさんらは、本日の一番ビリ組だったと言う事でありますね。

     駐車場で身支度を整えたわけですが、3名ともハーネスを身につけ、ヘルメット着用で、ザックにはカラビナやらロックハンマーやらがぶら下がっている訳です。
    たぶん、中途半端に船形山を知っている人は、いったい何処へナニをしに行くのか?と不思議がる事でありましょう。
    しかし、しっかりと船形山と向き合うと、この出で立ちが必要な場所がちゃんとある事が分かる訳であります・・・なんちゃって。

    保野川へそそぐ支流ですが、硫黄を含む鉱泉水であります・・・立派な硫黄泉ですよ。

     10時10分、保野川の水へ足を入れました。

     保野川は、おっさんの持っている2004年版の登山地図では瓶石沢となっていますが、しかし、おっさん的にはこれが瓶石沢と言うのは納得がいかないので保の川と呼び続けようと思います。
    で、入渓地点では結構広い沢の様相を見せている保野川を石伝いにポンポンと、または水に入ってジャブジャブと行く訳です。
    淵になった所では驚いたイワナが慌てて隠れるのを見ながら、水量豊富で涼しい沢を思い思いの足取りで詰めて行くのであります。
    程なくして、おっさんが先行者の足跡と思しき物を見つけて、千葉B氏に「先行者が一人居ますねぇ」と告げたんでありますが、しかし後で考えるとそれは熊が沢を渉った足跡であるな、と思うのであります。
    ナント言ってもその足跡は、人間の足のように扁平ではなくぽつんとまん丸でありまして、その後一度も人の足跡は見なかった事からも、全員一致であれは熊でしょうと・・・。

    保野川は明るく優しい渓相が味です。

     保野川を詰めてすぐに素敵な滑床(ナメ滝)に出会うのですが、これがまた美しく、そしてその流れは上品なのであります。
    ここまでなら大滝キャンプ場から20〜30分ですから、お弁当を持って是非ともお出掛けください。

    これが滑床・滑滝です・・・薮っ気が無いのが良いのです

     さて、滑床を楽しんで、小さな滝をヨッコラショと乗り越して少し進むと、今度はおっさんが勝手に「一の滝」と名付けている滝に出会います。
    沢登りの心得の無い人でもここまでは簡単に来られますので、皆様お誘い合わせの上是非ご来場賜りたく・・・まっ、大勢で行く所でもないのでありますが、ここまででも十分保野川の美しさ、楽しさは堪能できるのであります。
    まあ、そう言う人は居ないと思いますが、この紹介を真に受けて、秋の紅葉の頃なんかに鍋を担いで行って芋煮会とかは、とても良いでしょうけれども、沢の環境を破壊したり熊が驚くので止めましょう。

    これが「一の滝」です。

     で、一の滝は何処からでも登れそうですし、実際何処からでも登れるんであります。
    しかし、おっさんは敢えて、一番難易度の高い中央突破・・・シャワークライムを狙った訳であります・・・が、あんまし水を被ると身体に良く無いので、その脇の難易度的に次のルートを取った次第であります。

    上から俯瞰するとなかなか高度感も有る訳です

     この滝は一番左(右岸)から登るとただの登山道になっちまう訳でおもしろく無い上に沢登りの本質から逸脱してしまうので、もしもこの滝に出会った際には、ぜひとも飛沫を浴びながらのルートをお勧め致します。
    いや、こう言う書き方をするとさぞかし凄い所を凄い事になって登るのであろうなと感じた貴方は、それは勘違いです。
    それほど大した物ではないのですが、おっさんの的には、そう言う大層な気分で登っていたと言う事を表現をしているのであります。

    千葉B氏が一の滝を登っている所です

     さて、一の滝を登り切って直ぐ、10分も行くと二の滝が現れる訳ですが、これが本日のメインイベントを司る滝なのであります。
    高さにして10メートルと一寸、傾斜は平均して82.6度・・・まっ、ハングも無く、垂壁でも無いので、ちょっと岩登りの心得のある人ならフリーでスイスイと登れるんでありますが、しかし、もしも、まかり間違った場合は相当に痛い目を見る事になるのは明らかなので、おっさんらはロープを出した訳であります。
    もしもこれを巻くとするならば、右岸から行く訳ですが、それも中々面倒な登りと下りでして、10メートル程度のヒモでもロープでも無いと難儀すると思います。

    おっさん現場ではクライミングの準備で写真を忘れておりまして、下からの物が有りませぬ

     そんな訳でおっさんが最初に猿回し状態でロープを引っ張って登った訳です。
    で、三点セットも持っているんで、気分高揚の為にハーケンなど一本打ってヌンチャクを掛けて安全確保と・・・で、少し上に上がったら思ったより手強くて手掛かりも足がかりも無く簡単に行き詰まって・・・うーむ、と。
    さぁーて、どーしよう?と思っていると、下から千葉B氏が・・・一本打って確保して左へ回るのが宜しい、と指示をくれた訳です。
    うん、そうだな、ナニは無くても命の確保だな、と、適当なリスを見つけたので適当なハーケンを一本打ち込んで確保が出来たのでありました。
    で、落ち手も大丈夫、と思うと身体はナンボでも動く物でして、ダメだと思った真っ直ぐを割と簡単に登っちまう訳であります。
    しかし、懸垂で降りながらハーケンを回収した訳ですが、2〜3回ハンマーで叩いたら簡単に抜けたと言う事は、ほとんど効いてなかったんですね。

    滝の上部、横から下を見た図であります。

     で、おっさんが登り切って、適当な支点を取ったら懸垂で一度下りまして、次に登る千葉B氏のビレイをした訳です。
    で、千葉B氏が登り切って、おっさんが手持ちのスリングで適当に取った支点を補強して、いよいよY譲の登攀開始であります・・・ビレイヤーはおっさんでありました。
    しかし、Y譲は山を始めて2年と数ヶ月とは信じられない度胸の良さとセンスを見せまして、ほとんど何の問題も無く登り切ったのでありました。
    で、荷物をロープで引っ張り上げたのでありますが、おっさんは適当にザックを括りつけてオーライ、とかやった訳ですが、中には昼飯で使う生卵が6個も、あのプラスティックのケースのまま入っていたのでありました・・・割れたのは1個だけでした、と。
    そんな訳で、せっかくエイトカンも装備したのだから、Y譲に懸垂で下りてもう一回登ったら?と勧めたのでありますが、昼飯時が迫っているので準備をすると言う事で、懸垂は止めました。

    二人は慌ただしくも素早く、冷やしうどんの制作に勤しんでおりました

     毎度の事なのでありますが食事の支度が始まるとおっさんは何もする事が無く、傍観するしか無い立場に居る訳であります。
    で、仕方が無いので缶ビールを片手に、声だけ出して参加協力する訳ですが、近頃は図々しくなって調理途中のキュウリとかチャーシューとかを摘んじまったりするようになった訳です。
    この時の沢の温度は15度でありまして、ビールを冷やすのには不十分かと思いましたが、豈図らんや、飲んでみるとバッチグーでありました。

    冷やしうどんには卵焼きやゆで卵や焼豚も添えられ、完璧です

     さて、おっさんは手伝いもしない代わりに口出しも出来ない訳で、じーっと完成を待ちわびつつビールをグビグビやっている訳です。
    最初は滝の轟音が耳に入っていた訳ですが、暫く経つと脇を流れる沢の音が聞き取れるようになるのが不思議です。
    これがアレですか、自然のオーケストラなんでありましょうか?時には鳥のさえずりだってちゃんと聞き取れるのですから。

     お昼ご飯をゆっくり食べて、ビールなど飲んでしまうと、本日の遡行はもう終わった気分になっちまう訳でありますが、しかし、位置的にはここはまだ半分にも充たない所な訳でして、はっきり言って先は長い訳です。
    おっさんら一行が昼飯を食っている直ぐ脇のチョロ瀬では生まれて間もないイワナの稚魚が泳いでいたりして、完全に自然に溶け込んでいた訳であります。
    しかし、千葉B氏がザイルを上げ始めたのを潮時に、ああ、やっぱし先へ行くんだ、と暗黙の行動開始の合図となったのでありました。
    それでもおっさんはトボケて、ロープ上げたら降りて帰られないっちゃ?なんて言ってみた訳ですが、以下2名はきっぱりと、先へ行くのだ、と宣ったのでありました。

     実際今回の山行は二の滝で岩登りの基礎をやる、岩登り道具の使い方を練習する、というのが主でありまして、それが滞り無く終了した挙げ句、ビールを片手に豪華冷やしうどんなどを喰ってしまったら精神的には試合終了となるのは否めない訳です。
    結局、各人が異口同音に、滝から先は消化試合だよね、と言いながら1時間半程歩いて升沢小屋の裏へ出たのが既に3時を回っていたのであります。

     大体升沢小屋で3時を過ぎているなんて事になったら普通は下山を急ぐ訳でありますが、なんたって隊長が千葉B氏な訳で、日没には十分間に合うから、と言う事で小屋に入ってコーヒータイムであります。
    静かな升沢小屋に腰を落ち着けると、ここで一泊だったらナンボ楽しいかなぁ、なんて思ったりしつつ飲むコーヒーは絶品でありました・・・これもご馳走になるばかりで、おっさんって、食料関係ではホントーに何の役にも立たない迷惑な存在で、申し訳ないっす、と。

     おっさんとY譲はここで沢靴を脱いで登山靴に履き替えたのですが、千葉B氏はモンベルで売っていた滑り止めスパイクを沢靴に装着して下山した訳です。
    後ろから見ているととても塩梅良い感じで、ホホォー・・・おっさんも欲しいな、と思ったんでありますが、冬の商品なので今はもう無い、との事で少しガッカリ。

     もう誰もいないよ、駐車場は空っぽだよ、なんて言うのに対しておっさんは、いやぁまだ2台は居るよ、なんて言いつつ、日が傾きかけた登山道を降りて来たのであります。
    日没近く、人の気配のない山道はなんだか神秘的と言いますか、幻想的でありまして、普段とは違った趣きを見せる訳です。
    なんだか少ししんみりした気分になって、見慣れたブナの木も違って見えたりして、夕方の森は格別でありました。

     さて、大滝キャンプ場到着は5時半でした・・・流石に駐車場には車は一台も有りませんでした。
    山登りでもない、沢登りでもない・・・「山遊び」と言う新しいスタイルの遊び方をしているのもか知れないな、なんて思うのですが、しかし、毎度毎度、豪華昼飯を提供してくれている、千葉B氏とY譲の協力が有っての遊びですから、おっさんは今日も感謝の気持ちで、胸いっぱい、腹一杯でありました、と。

     この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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