よたよたと、山登り


    No.67

       

    大東岳裏コース〜小東峠

       沢を登りに行ったはずなんだが・・・?

     7月29日 曇り〜雨

     ヘルメット持ってぇ、沢足袋背負ってぇ・・・

     山登りの雑誌に大行沢から樋の沢を遡行した記事が載った訳です・・・全国紙に東北の、しかも地元でも地味な存在であまり話題に上らない、大行沢の遡行が載った訳でありますから、これは所謂一つの快挙であるな、とおっさんは思った次第であります。
    で、思ったついでに久しぶりに大行沢を詰めてやろう、と思った訳です・・・いや、雑誌にも有った通り、岩床沢を超すまでは裏コースを歩いて、ゴルジュ帯やらを超してから沢に入って、軽く樋の沢の避難小屋手前まで、そして、余力が有ればそのまま、ハダカゾウキ沢を登ってみましょうかね、と、ほとんど行き当たりばったりの計画でありました。

     朝起きてみるとどんよりとした曇り空に、天気予報は、間違いなく雨が降っかんね、覚悟しろよな、と宣っている訳です。
    うん、こんな予報の日に山に行くだけでもアレなんだが、しかも、沢に行こうというのは、ナント言うか、まっ、世間ではバカと呼ばれても差し支えない行為であるな、とおっさんも思ったんであります。
    が、しかし、ずーっと登山道と平行している沢な訳で、沢に入らなくても山は歩けるんで、まっ、ダメ元で行ってみましょうかね、と。

     本小屋で登山届けを出してトイレを済ませ、出発は8時40分でありました。
    たまーに、ポッツン、ポッツンと落ちては来るものの路面を濡らす程でもなく、まっ、本降りになったらそこでお終いと出掛けてみました。
    まあ、大行沢に興味が有るのは間違い無い訳です・・・昨年千葉B氏が遡行して、おっさんに、「なんだもねぐいいがらいってみっすぺぇー」と宣ったのを聞いてから、ずっと行きたいなと思っていた訳で、そこに雑誌の記事の後押しが入ったのでありますから、行かない訳には行くまいぞ、となるのは必然であります。
    千葉B氏の名誉の為に書き添えますが、上記の仙台弁はおっさんの脚色で、氏はそんなに訛っていません・・・一寸です。

     時折ポツポツと来るものの、ブナの森は傘要らずでして、全く濡れる事も無く、却って日差しが無い分涼しくて快適とも言える山歩きになっておりました。
    おっさん、ガキの頃にもの凄く良く歩いたのが本日の裏コース・・・当時は表コースを立石沢コースと呼び、現在裏コースと言われるこちらは、大行沢コースと呼んでいました。
    で、おっさんは樋の沢にテントを張ってのんびりするのが好きだったのでいつも樋の沢までの道を歩いていた訳です。
    学校が有るときでも山に居たおっさんを級友が、進級に関わる大事なテストが有る、と尋ねて来てくれた事も有りました・・・懐かしい思い出です。

     さて、足も痛く無いし、気温も高く無く、順調に歩いて行った訳です。
    で、裏コースを樋の沢までと言うと大した登りも無く、登山地図のコースタイムでも2時間10分と軽いもんなんであります。
    が、しかし、おっさんはこのコースタイムに疑問を持っている訳です・・・書いた人が見栄はってんじゃねぇのぉ?と。
    と、言いますのは、地図が書かれた当時と今は登山道の条件が変わっているのではないのかと、おっさんは思う訳です・・・ちなみにおっさんの地図は少し古くて2004年版であります。

    行きは乾いていたので渡りましたが、帰りは濡れて滑りそうだったので迂回しました

     ほとんどお散歩気分で雨滝辺りまで来まして、久しぶりにじっくりと岩壁を眺めてみました・・・雨滝はドーでも良いのです。
    どこかに登れる所は無いのか?どーしてこんな素晴らしい岩場が登られずに放置されているんだ?脆いのか?・・・どーれ、調べてみんべ、と。
    で、雨滝の回りは濡れているので論外として、先に行って濡れていない、良さそうな岩の下までよじ登って岩に触ってみた訳です。
    うーん、どーしてどーして、しっかり堅い岩じゃないかい、と思ったんですが、ハーケンの打てるリスと言うか割れ目と言うか、それが少ない岩であるなぁ、と。
    しかし、遊べそうなので秋になって葉が落ちたらロープ持って遊びに来よう、と思った次第であります。

    ほとんど垂直ですが凸凹が多く、ハーケンさえ打てれば登れそう、なんちゃって

    ここなんてとってもお手軽っぽく見えるんですけどねぇ

     おっさんはこの度、見事に迷子になりました・・・間違えた場所は、京淵沢を渡った所でした。
    迂回路があって、京淵沢側に回り込んで行くのですが、おっさんは何も考えずに大行沢と平行に行こうとした訳です。
    いや、行って直ぐに派手に倒木が行く手を阻むし、踏み跡は不明瞭になるしで、普通の人ならおかしいと思って引き返す状況では有ります。
    しかし、始めて来た人がここで地形図に頼ったとしたら、旧道を追って大行沢の崖っぷちに追い込まれる事になるだろうと思うのであります。
    んじゃぁ、昭文社の登山地図は、と言うと、京淵沢と岩床沢にはさまれたピークの大行沢側の崖下を進む事になる訳です。
    まあ、どちらの地図でも岩の頭を見せているピークの大行沢側を行っている訳です・・・恐らく新しい登山地図は訂正されているはずですが。
    で、おっさんはヤバイなとは思ったんですが、恐いもの見たさで薮にしがみついて降りて行ってみた訳です。
    成る程な、まだゴルジュ帯を抜けていないので沢に降りるには懸垂下降しか無いな・・・止め、となって、んじゃぁ登山道をめがけて登るしか無いな、とアスナロの若木をひっ掴んで、ピークの頭をめがけて登って行った訳です・・・辿り着いてみると、うーむ、獣道風な踏み跡とも見えなく無い筋が有るには有るが・・・こりゃぁ戻った方が身の為だな、と。
    と、言う事で、概ね1時間程、ここの辺りでウロウロしていた訳です・・・結局は迷ったときは振り出しに戻る、で、京淵沢を渡る所まで戻った訳です。
    戻って見ると、誰が考えてもこっちが踏まれているな、と言う道が京淵沢側に、岩のピークを巻いて着いている訳です・・・おっさんの手持ちの地図は尽く裏をかかれていて役に立たないのであります。
    しかし、この道を進んでみて思うのは、昨日今日の巻き道ではないので今はこれが本道なのであろうな・・・間違うのはおっさんくらいのものか、と。
    で、この巻き道部分は岩場がそこそこ有って、大げさとはいえ鎖場やお助けロープの急傾斜が有る訳です。
    おっさんが知る限りの宮城県の登山道の中でも、落ちたら痛い度や転けたらヤバイ度はけっこう高い登山道になっているな、と思う次第であります。

    樋の沢から下ってくれば親切な迂回路の看板に出会います

     さて、けっこうな岩場が有るねぇ、雨が本気で降って濡れたら厄介だねぇ、なんて思いながら進むと、地図の毛虫マークが切れて大行沢にも降りられる辺りに、ご丁寧な迂回路の看板と、しつこくロープを張って、絶対にそっちに行くんじゃねぇぞ、と教えてくれる訳です。
    まっ、普通に大東を登ったら立石沢から樋の沢に回ってこっちに出てくるわなぁ・・・んじゃやっぱしおっさんが悪かったな、と。
    しかし、赤ペンキも所々に塗られている訳ですから、あそこにも一発、ポチッと矢印なんか有ってもバチは当たんないよなぁ。

    ふうーっ、なんだか妙に疲れたな、と思ったらこんな花が慰めてくれました

     さて、やっと大行沢に降りられる所に出た訳です・・・たぶん雑誌の取材もここから入渓したと思う地点でおっさんも大行沢に降りてみました。
    まっ、少し水が多いかな、と言う程度で穏やかでありましたが、おっさんここまでの薮漕ぎと崖登りでけっこうくたびれてしまっておりました。
    で、沢に出たとして、目の前にでかい釜がある訳です・・・なんだか面倒くせぇな、と言う事で、また登山道へ逆戻りであります。

     程なくして樋の沢の避難小屋に辿り着きましたが、どーしてここの小屋は暗い雰囲気が漂うんでしょうかねぇ?前に覗いたときよりはだいぶきれいになっていたし、これと言って何も不都合は無いんですが、なんだか暗くて泊まりたいとは思わないんですよね。

     どーすっかなぁ・・・もう12時だしなぁ・・・でも小東は直ぐそこだからな、行ってみっか、で樋の沢を一またぎして小東峠へ向った訳です。
    いや、ハダカゾウキ沢を詰めるなんて、そんな気はもう既に雲散霧消でありまして普通の登山道を行くだけでも気持ちは萎えそうなんでありますから。

     と、言う訳で小東峠を目指してハダカゾウキ沢と平行に着いている登山道を登って行った訳です。
    樋の沢を越えて暫くは良く踏まれた気持ちの良い道であるな、と思ったんでありますが、沢の音が聞こえなくなって直ぐから、道が薮に覆われて来る訳です。
    夏草の頑張り具合から察するとあまり踏まれている道ではないな、と思って更に進みますと、道は涸れた沢筋のゴロゴロ岩の道になるのでありますが、ここまで来ると人の通った気配はほとんど感じられなくなるのであります。
    しかも、この辺りからポツポツの雨がボツボツの大粒になって来た訳で、下りで濡れた岩は厄介だなぁ・・・腹も減ったしなぁ、と。
    そう言えばおっさん、ここまでノンストップの無給油で歩き続けている訳で、腹に入れたのはあめ玉一個と沢の水だけでした。

     ヤバイなぁ・・・雨で濡れたら滑るよなぁ・・・草で足許見えないし・・・腹減ったしなぁ・・・止めっかなぁ・・・あっ、峠に出た、と。
    樋の沢からぴったし1時間で小東峠に出ましたが、雨は本気で降り出しておりまして、ここから20分の小東岳に行く気はすっかり失せてしまいました。

    一応小東峠のお印の看板です

     さて、時間は既に1時であります・・・雨脚強いし、腹減った、と。
    そんな訳で、滑る岩に時間を取られる下りを考えると、ドーしたって小東岳に行っている暇はないと判断し、本日はやむなくここで退却と決定しました。
    そんな訳で、ザックから取って置きのカレーパンを取り出し、ザックカバーを掛け、濡れていないタオルとレインハットを取り出し直ぐ出発。
    ああ,下りの補助にとステッキも取り出して万全の体制で、パンなど齧りながらの下山であります。
    しかし、濡れた岩というのは厄介ですねぇ・・・しかも、夏草に覆われて足許がちゃんと見えないもんですから、おっかなびっくりの足運びであります。
    昼飯用に背負って来たラーメンと生卵は出番を失って背中で小さくなっておりましたが、避難小屋で雨をよけてラーメンなど喰っているよりも、さっさと歩いた方が良かろうと言う事で、小屋には目もくれず通過であります。

       それにしてもホントーにブナの森は傘要らず、でして、程良いお湿り程度しか濡れませんで、足許の靴がぐちゃぐちゃな事以外は割と快適でありました。
    もちろん合羽なんて着ませんよ・・・どうせ中から蒸れるだけですから。
    それと、大東の裏コースは水筒要らず・・・これもホントーです・・・本日の飲み水は全部沢から頂いて間に合わせました。

     いや、おっさんの歩くのが遅いからと言えばそうなんですが、8時40分に出発して2時過ぎには戻れると踏んだのが、4時10分でありました。
    はっきり言って参りました・・・本日の敗因は、道間違いで無駄な労力を使っちまった事だと言うのは歴然でありますが、それにつけても、おっさんの体力と勘は、劣化してますねぇ。

     この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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