よたよたと、山登り


    No.73

       

    鳥海山 伏拝岳〜七高山〜新山

         10月21日 曇り〜晴れ〜霧

     鳥海山は石と岩の殿堂でありました

       21日(水曜日)のうちに滝の小屋の下の駐車場でスタンバイ・・・車中泊でありました。
    で,明けて翌日・・・3時半頃に一度目覚めると、叩き付ける様な雨と、停車している車が風で揺れる訳です・・・こりゃぁ中止かぁ?と、考えるまでもない状況なので睡眠の継続に。
    で、ナンボか辺りが白んで来たなと言う5時20分、再度の起床・・・これは緊急的にトイレに行きたくて強制起床でありました。
    トイレに向うと、懐中電灯無しで十分なんですが、しかし、濃霧でありまして、山に登ろうと言う気は全く起きない状況で有りました。
    しかし、他にする事も無いし、昨晩は早めに酔っ払って8時半に寝入ったので流石にもう眠くは有りませんで、んじゃぁ、朝飯の準備でもして、と言う事で毎度の鍋焼きうどんを煮る事に。
    特製の卵とネギ入り鍋焼きうどんを食して、コーヒーなど飲んでいると、風が収まり、小雨に近い濃霧であった霧も随分と薄くなり、お陽様の位置が分かる程度に回復して来たのでありました。
    そして、ラジオから流れる天気予報では、昼頃には山形県画地で晴れ間が出るでしょうと宣っているので、んじゃぁ鵜呑みにして出掛けますか、と。
    そんな訳で、律儀に登山届けを書いて、記念すべき鳥海山への第一歩を記したのは、7時1分前でありました。

     
    滝の小屋です・・・公衆トイレ併設で、使えました。

     歩き始めは不揃いの石を敷き詰めた石畳風の登山道でありまして、まあ、下りはともかく、登りは歩き易い道であります。
    で、大してきつくも無い登りを15分も行くとすぐに「滝の小屋」であります。
    夏場は営業小屋として食事も提供している山小屋でありますが、既に冬支度が始まっているようで、営業はしていませんでした。
    で、まだ歩き始めたばかりなので休憩する時間でもないので、一目眺めてすぐに前進、と。
    ここからは普通に山道なんでありますが、これを普通と言うかドーか?なんと申しましょうか、枯れた沢の岩伝いの道と言う感じで、飛び石や岩を拾って踏んで行く道なのでありまして、けっこう足に来るタイプの登山道であります。

    見通しが良くなったら、晴れ間が出て目指す山頂付近が見えました

     滝の小屋(手持ちの高度計で標高1290m程)を過ぎると灌木と笹の中をグイグイと高度を上げて行くのですが、その道はやっぱり岩の上を伝う感じで、土の道ではないのでありまして、一歩一歩の歩幅が定まらず、やっぱり沢登りのようでありました。
    石と岩の道は自分のリズムで歩けないのが難点でありますが、刈り払いなど手入れの良い事に助けられ、程なくして河原宿小屋に到着でありました。

     
    営業終了で冬仕舞の最中でした

     ここまで、歩き始めから1時間と一寸でありまして、まだ休憩する程の事も無いのですが、念のためにと言う事で、山小屋よりも立派な公衆トイレに立ち寄ろうとしましたが、こちらのトイレは施錠されており使用不可でありました。
    施錠されてからそこそこ時間が経っているのか、手入れの周りの岩の隙間にティッシュが丸めて押し込んであるのが目につきました。
    おっさんは用足しを中止して先へ進む事に。

    噂に聞く「心字雪渓」の名残です

     河原宿小屋の周りは湿地帯の様で泥炭の様な黒い土に覆われているのですが、登山道は沢筋と思しき岩の上に着いているのであります。
    と、言う事で、やっぱし枯沢の岩を伝って歩く感じで行く訳であります・・・ここで標高1550程度でありました。
    この辺りからは霧さえ晴れていれば、これから向う外輪山が常に見えているのであります。
    しかし、見えているのは励みにもなる反面、一生懸命歩いているにもかかわらず思ったより近づかないと言うジレンマも味わう訳であります。
    まっ、霧で暗いよりは青空の中に行く先を見上げる方が楽しいのは間違いないんでありますが・・・。

     
    霧が腫れてこれから行く外輪山方向がくっきりと見えました

     さて、ずーっと石や岩の上を伝い歩きのようにして来た訳ですが、河原宿の小屋を過ぎてから全くのガレ場の様相になりまして、歩く速度がガクッと落ちたのであります。
    大した休憩も取っていないのに、登山地図が示すコースタイムとあまり違わない時間を要しているのであります・・・あいやぁ、本日は本人の自覚とは裏腹に相当に不調なのであるか?などと思わざるを得ない訳です。
    で、大きな涸れ沢を横切るようにペンキの道標があった所でおっさんはピーンと来ました。
    手持ちの登山地図の表記ではここは雪渓になっているのでありまして、最盛期にはアイゼンなど履いて登るコースな訳です。
    で、雪が消えた今は、ガタガタの岩場・ガレ場コースに変貌している訳で、雪渓をコンスタントに歩ける時期のコースタイムはとても出せないのであるな、と。
    実際に黄色ペンキの導くコースは、矢印のものと丸印のものとで微妙に通る場所が違うようで、それは残雪期と無雪期のコースの違いであろうか、と、想像する次第であります。
    距離にして4キロちょっとで標高差1000メートルを登るのは、まずまず、登り応えのある登山道でありますが、それが岩場・ガレ場と言うと、弱い足首には容赦ない負担でありました・・・帰り道が嫌だなぁ、と。

    2120メートルの伏拝岳の分岐(外輪山の一部で明確な山で無く、ただの突起)

     まあ、それでも3時間30分のコース予定のところを3時間で登り着いて、10時丁度に外輪山に到達でありました。
    自分としては標高を稼ぐのはここまでで、あとはぐるりと外輪山を周遊して下山、と考えていたのでありますが、鳥海山のコースの真骨頂はここからなのでありました。
    地図ではここから30分程度で七高山(2229メートル)にほぼ平行移動、なっている訳であります。
    しかし、地図と言うのは平面図の悲しさでありまして、いや、等高線を読め、と言われるかも知れませんが、おっさんの性格では細かいアップダウンは無視でありまして、平行移動と決めていた訳であります。
    しかし、実際に歩いてみるとノコギリ状の細かい登り下りがありまして、直線で測った距離の割には(1.2キロ)時間を食うのであります。

     
    七高山の山頂にて・・・おっさんのトレードマークの捩り鉢巻きが無い

     前日に駐車場で隣り合わせた車の人が丁度下山して来た所で少し話をしたのですが、七高山からこの駐車場が見える、と言ったのであります。
    が、しかし、おっさんの周りを囲む厚い霧はびくともする様子が無く・・・いや、風は強風なんでありますが、一過性の霧ではないのでナンボでも湧いて来るようであります。
    そんな訳で、何も見えない山頂ではお印の写真を撮って直ぐに退散と・・・それにしても、案内板と言うか道標が見難く、はっきりしないんだよなぁ、この山は。

     
    霧にかすむ「大物忌神社」・・・なんて読むの?

     で、この山全般に言えると思うんですが、道標がはっきりしない訳です。
    登山地図では、七高山から本当の山頂の新山へ向うには、近道が有るように記されているのですが、入り口が判然としないのであります。
    うーん、これかな?と言う所はあったのですが、明確な道標は無く、しかも、行く先は急峻なガレ場とあって、まかり間違って登り返すとなると厄介極まるな、と言う事でパスして、先ほど通過して確認済みの分岐点まで戻った次第であります。
    いや、たぶんこれが正解であったと思ったのは、一番明確なルートを取ったにもかかわらず、そこそこ急なガレ場下りでありましたから。

    新山への登りで薄日が射して来た・・・のは束の間

     小屋と神社に立ち寄るのは後回しにしてとりあえず鳥海山の本当の山頂へと向った訳であります。
    いや、魂消ました・・・鳥海山なんて、ずーっと高い所まで車で上れる,お手軽観光登山の山でしょ、と思っていたのでありますが、頂上へ向って詰めの登りは、ホントーの岩場でありまして、アルペンムード満点なのでありました。
    いや、岩のフリクションはすこぶる良く、危ない箇所は皆無と言える気分的、ナンチャってアルペンなのではありますが、しかし、この雰囲気は東北では得難いものである訳で、称賛に値するとおっさんは思うのであります。

    岩陵の山頂の狭さは絶品で、定員無理繰りでも5〜6名様程度です。

     さて、大物忌神社の小屋の前から山頂までは慎重に登って20分程度有りました。
    で、解説書によれば、日本海が見えるとか、アレが見えるコレも見えると宣っているのでありますが、おっさんの登頂の折には、霧にむせび泣く山頂、しかも風強く寒い、と言う事で、長居する理由は一つもなかった訳です。
    まさかこんな日に、と思いましたが、山頂には先行者が二人居まして、記念写真のシャッターなどお願いし、世間話もそこそこに小屋で昼飯を食うべく早々に退散でありました・・・山頂の気温は0度でありました。
    岩陰に微かに粗目雪が残っていたので、ずーっと前の低温の時には降雪があったのかも知れません。

     
    梯子もあるし鎖も有るし、でも無くても困らないかも?

     山頂の小屋もシーズン中は営業小屋なのですが、既に閉められていましたが、一部の建物が避難小屋として開放され、立派な公衆トイレも解放されておりました。
    避難小屋で風を避けて昼飯だなと思ったんですが、登山靴を脱がないと中に入れない小屋でありまして、面倒だな、と。
    んじゃぁ、と言う事で、立ったままコロッケパンを一個齧り、みかんを一つ食べ、お茶など少々飲んでさっさと出発でありました。
    下って来る時に難儀だなと思った外輪山への道は、登りに使うと左程の事も無く、あっと言う間に分岐に到着でありました。
    で、ここから下山路の分岐点の拝伏岳まで、間に行者岳など挟んで行くのであります。
    全編霧に包まれていて何も見えないのが悔しいんでありますが、見えたらさぞかし凄い景色何でありましょう、と、言う匂いはする訳です。

    この手の古い標識が大切にされていますが、判読は不可能です

     途中の行者岳のあたりで、おっさんよりもだいぶ先輩筋と思しき年齢のご夫婦に出会いましたが、これから新山の山頂を目指すと言うので、悪い事は言わないから止めた方が良いですよ、と、ご忠告を申し上げました。
    聞けば、朝の七時頃には登山を開始しているようなので、ここまでで相当な時間をかけている訳で、実際問題、ここから直ぐに下山しないと夕暮れと追いかけっこになるからね、と、ちょっときつく言っちまいましたが・・・100名山ハンターのようでした。
    おっさんが分岐点に辿り着いたのが12時30分でありますから、一周ぐるっと周った時間は、休憩と記念撮影を入れたとはいえ2時間30分掛かっている訳で、地図で見ると近そうですが、以外に時間を食う山頂周りなのでありました。

    下山路も全編ゴロタとガレ場でありました・・・そりゃそうだ、往復だもん。

     本日はお日柄も良く、足の具合もそんなに悪く無かったのでありますが、やっぱし、たまに飛び跳ねないとダメな岩場ではダメージが大きいようであります。
    程なくして右足が痛くなり、ピョコタコ歩きになったのであります、が、本日はダブルストックと言う武器を持っている訳です。
    しかし、急傾斜の岩場の下りではダブルストックの効用も半減と言うか、たまに危険だと言うか、まず、予定していた程の効果はなかったのであります。
    一つには、ストックタイプのグリップは人間の手首の関節の仕組み上、操り難いと言うのが有ると思う訳です。
    これまではステッキタイプを一本使っていたのでありますが、下りに関してだけ言えば、上から握りしめ体重を預けられるステッキタイプに分が有ると、おっさんは感じた次第であります。
    で、能書きはアレですが、いやはや、下っても下っても岩また岩でありまして、このコースは残雪期お勧めのコースなのであるな、と痛切に感じました。

    鳥海山の登山道では古い標識が大切にされているのが良く分かります

     本来は雪渓を滑り降りるように下るのが楽しいコースなのでありましょうが、時期外れにやって来たおっさんは、水無し沢のゴロタを、膝をがくがく言わせながら下るのであります。
    いや、登りよりはナンボか早いと思うんでありますが、それでも、だだっ広いガレ場のコース取りで、ペンキの案内が見えないと厄介であります。
    コレで濃霧に巻かれたら相当に厄介で難儀する場所だなと、おっさんは思うので、勘の良く無い人は要注意です。
    で、だいぶ上から河原宿の小屋が見えるんでありますが、コレが中々近づかない訳であります・・・いや、ガレ場はもう沢山です、と。
    コレでもかぁ・・・と、ガレ場は続きます。

     さて、ナンとかカンとか河原宿の小屋まで降りまして、後一息・・・一服するより下りた方が良いな、で小屋を通過。
    この時、冬仕舞いの支度に来たのか、小屋の人が作業をしておりました。
    で、おっさんはナニを勘違いしていたのか、ここまで下れば後は笹薮の楽な下り、と思っていたのが、相変わらずの岩飛び石飛の下り道でありまして、右足首は浮腫んで大きくなったのか、何もしていない靴ひもが絞まって来たのでありました。
    陽は西に傾きかけ、風も冷えて来て・・・そう言えば本日はスタートで着込んだウインドブレーカーを一度も脱がずに歩き通したな、しかも軍手着用と。
    ああ、もう冬は直ぐそこだなぁ・・・本日雪にもあわずに2200メートルの山に登れたのはラッキーであったも、なんて事を思いつつ、最後に不揃いの石畳を歩いて駐車場に出たのが3時10分でありました。

     いや、もっと手軽に廻れ予定で出掛けたのでありましたが、思ったよりも足場が悪く、手強い相手で有りました。
    しかし、景色が見えなかろうと、霧だらけであろうとも、やっぱし山登りは楽しいもんでありますね。




     この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


    ご意見ご感想は こちらで、承っております・・・


    INDEXに戻る 次のページへ