よたよたと、山登り
No.76
八ヶ岳連峰 赤岳
12月06日 快晴
おっかなびっくり 腰を低くして行ってみた山
3000メートル峰など一つも無い、東北の田舎者であるおっさんは高い山は知らない。
なので、地図で高さを見ただけで憧れ、畏敬の念さえ抱いてしまうのであります・・・早い話しが、ビビル訳です。
この度は、おっさんの人世初のほぼ3000メートル峰(2899メートル)に挑むにあたって、場所の吟味から始まって、自分の持っている装備や技量と照らし合わせ、比較的短期間で登れそうで、なおかつ3000メートル級でそれなりのハッタリの効く山と言う事で八ヶ岳連峰を選んでみました。
しかし、最終的な決め手となったのが、八ヶ岳は初心者向きであると言う、ガイドブックのひと言であったのは内緒であります。
12月5日早朝仙台宮城インターから高速に乗り、栃木やら群馬を経由して長野県に入り、最終的には南諏訪インターで下りて、登山口の美濃戸を目指した訳であります。
5時半に高速に乗り、美濃戸の駐車場到着が12時頃でありましたから、6時間半、ほとんど走り続けた訳で流石にくたびれました。
で、成田空港よりも高級な料金、一泊二日2000円也を徴収され、駐車場と言う名の広場を後にしたのが12時30分でありました。
余談ですが・・・翌日午後2時半に駐車場に戻ったら張り紙がされていまして「一日延びています、あと1000円を支払って下さい」と書かれている訳です。
まあ、午後の2時過ぎに下山して来る奴など居ないと踏んで、翌日の朝に逃げられたら適わないから前日から張り紙したのかどうか分かりませんが、余程疑り深い性格の人が経営者のようで、この度の山行の中で唯一気分の悪い出来事が駐車場の料金と張り紙の一件で有りました。
目指す赤岳鉱泉まで、暫くは普通の林道歩きでした。
さて、駐車場の脇の山荘で用足しなどしてから出発しようとしたのでありますが、トイレは有料の張り紙を見つけちまったので,この上まだ金を払うのかぁ?と言うのも癪に触るので野糞にしてやるわい、と、さっさと出発であります。
ずーっと車の走れる林道を行って、なんだか桑沼の脇でも歩いているみたいだな、山なんてのは日本全国共通なのかな?などと思いながらも、たまにすれ違う登山者は皆さん頭にヘルメットを冠り、手に持つピッケルはシャフトのとても短いアイスバイル的なテクニカルな物を持っている訳です。
おおおっ、やっぱし東北の田舎者とは違うなぁ、と感心しつつ、自分の手にしているつるはしにも使えそうな程に長いシャフトのピッケルが場違いな雰囲気を醸し出しているなとちょっと恥ずかしい気分など感じる訳であります。
いや、現実にすれ違った大学山岳部風のグループの一人がおっさんのピッケルを見て「長げぇー」と感嘆していたのであります・・・バカにしていたのか?
おお、これが噂に聞く大同心の岩か?と、勝手に推測して納得
で、林道の終点には赤岳山荘他の通勤用のジムニーの駐車場が在り、3台ほど停まっておりました。
成る程・・・おっさんの勘では生鮮食品なんかはここまで車で運んで後は歩荷なんだろうなぁ、などと思いつつ、やっと登山道らしくなった山道を行くと、果たして・・・木製の、まるで大正か昭和の頃を彷彿とさせる木製の空の背負子を背負った若い衆が下りて来たのでありました。
で、日曜日でありますから皆さん下山の日な訳でありまして、時間的にもそんな時間帯でありまして、ドガチャカドガチャカと下山して来るのであります。
で、八ヶ岳では登り優先とか、足場の良い方が待つとかのルールはあまり無いようで、勢いの良い奴らが優先と言う事のようでありまして、一人でとぼとぼと歩いているおっさんは常に道を譲る事になるのでありました。
いやぁ、流石に迫力有るなぁ、と言いたかったんですが、高度感は薄かったです
いやはや、ナンボの人が山に入っていたモノやら、と感心する事頻り、後から後から人が下りて来る訳でして、しかも、その出で立ちからはおっさんのような登山者では無く、明らかにクライマーの装備を背負っている訳で、ナンだか場違いな所に来ちまったのかぁ?なんて思う訳であります。
で、下山して来る人の中にドでかいザックを背負っている人も多く、テント泊も盛んな山なんであるなぁ、と言うのが伺える訳です。
なんとなく大倉山の岩場に良く似てるな、なんて言ったら八ヶ岳に失礼ですか?
で、登山道の樹林の隙間から時折、山の岩壁などが垣間みられるのでありますが、正直に言うと、拍子抜けであります。
おっさんが唯一語る事の出来る昨年登った剣岳の雰囲気と比べると、劔岳が横綱級だとすると、こちらはナンボひいき目に見ても、前頭筆頭程度にしか見えないのであります。
いや、岩場の険しさは東北には無い雰囲気の山でありますが、何しろ、駐車場の標高が既に1500メートル以上な訳で、実質標高差が1300メートル程しか無く、さらに、本日お泊まり予約の赤岳鉱泉間で登っちまうと標高が2200メートルになる訳で、残りは僅かに600メートル強しか無い訳です。
と,言う事で、劔岳を下から仰ぎ見て、標高差2300メートルの迫力に圧倒されたあの感覚とはほど遠いスケールだったのであります。
いや、八ヶ岳にケチを付けているのでは有りませぬが、おっさんの偽らざる心境はそんなもんでありました。
赤岳鉱泉の大部屋です(大広間と言うらしいが)
で、長袖Tシャツに薄いフリース一枚で快適にとぼとぼと1時間半も歩いたら赤岳鉱泉に到着で有りました・・・2時ちょうど。
おっさんはこの手の有名山小屋は今度で2度目と言う田舎者でありますから、おっかなびっくり「頼もうー」と受付に出向いた訳であります。
で、受付を済ませ、一泊二食付きの宿賃9000円なりを支払いますと、大部屋と言う所へ行き、本日空いているので好きな所に寝てくれろ、と。
しかも、部屋につんである布団は好きだけ使って温かくして寝てくれろとの優しいお言葉。
しかし、只今まだ午後の2時過ぎ・・・高速でカレーライス食って来たので腹も空いていないしなぁ・・・暇だなぁ・・・ビールしか無いな、と言う事で、だだっ広い部屋なのに一番隅っこに慎ましく布団など敷いて陣地を確保の後、ビールを買い求めに番台へ。
350ミリリットルの缶ビールが500円ですか・・・アアそうですか、まっ、そんなモンでしょう、と買い求め、誰も居ない大部屋に戻って寝転がってグビリ・・・。
部屋の窓からアイスクライミングの練習風景の舞台裏が見えました
名前は赤岳鉱泉ですから風呂なんか入れるのかと思ったら、それは甘い考えです。
冬は、たぶん風呂なんか湧かす燃料が大変なのでお休みと言う事なのでありましょう・・・と、言う事で冬期は名ばかりの鉱泉宿でありました・・・いえ、情報は知っていましたので期待はしていませんでした。
しかし、晩飯の時間が午後6時・・・まだまだだが、外にはヘルメットを冠ったアイスクライマーの皆さんが点との撤収などで忙しくしている訳であります。
ナンだか物見遊山に下駄履きで見学に出向くのもナニであるな、と言う事で、部屋で地図など眺めて明日への鋭気を養うべく、ビール飲みに専念する事にした次第でありました・・・いや、早出の上に長距離運転の後山道を歩いて来たにしては疲れを感じていなくて不気味でありました。
興奮状態なのでありましょう・・・後でがっくり来るパータんですね。
雰囲気バッチリ、趣き満点の食堂の風景です。チラチラするけどテレビが映ってました。
事前の下調べで赤岳鉱泉の晩飯は美味い、とのブログなどを読んでいたし、それが大体はステーキである、と聞き及んでいたので、如何な肉が提供される物やら楽しみでありました。
で、本日のお泊まり客は総勢4名で、内二人はドイツ語の外国人で素泊まり・・・この広い食堂で飯を食うのはおっさんが二人でありました。
コレが噂の「牛肉のステーキ陶板焼き」の全貌です。
なるほど、冷凍な事は明らかであるが、正しく牛肉のステーキでありまして、エバラ焼き肉のタレ風味で頂くそれは結構美味でありました。
で、この時、同室の私よりナンボか年上風のおっさんと話をしまして、翌日登る予定の赤岳への道の注意点など聞いてみた訳です。
けっこう細やかに注意やアドバイスを頂いたんでありますが、ビールを立て続けに飲んでいたので正直に言うと上の空でありました。
いや、皆さん雪や氷や岩とのミックスなど、スリップに対して色々と心配してくれるんでありますが、コレばっかりは言葉ではナンボ言われてもピント来ませんで、アアそうですかぁ、と相づちを打ちつつも、何も分かっていない訳です・・・散々アドバイスを頂きながら失礼なおっさんで有りました。
で、隣の隅っこに陣取った年上のおっさん、明朝は早く出掛けると言うので6時30分からの朝飯では間に合わないとの事で弁当に仕立ててもらっておりました。
うーむ、そんな手も有るのかぁ・・・確かに山小屋の朝飯が6時半と言うのは遅過ぎるかもしれないな、と、思いつつも、自分の場合は7時半に出ても余裕だよな、と、計画していたので特別アレして下さいとも言う事無く、素直に出発と。
しかし、宿のお兄さんが「昼の弁当はドーしますか?」と尋ねてくれましたが、昼飯はここへ戻って牛丼を食うのでだ丈夫です、と断りました。
で、宿のお兄さん曰く、雪と氷の状況では赤岳往復で7時間以上掛かりますから、とのアドバイスも頂いたのですが、エネルギーちゅーちゅーやら、どら焼きなど大量に持っているので大丈夫でしょう、と返事をしつつ、よっしゃぁ、12時にここで昼飯を食ってやるぞ、と通しを燃やす変なおっさん、でありました。
夜、外人がトイレが近いのか、何度も起きてはガタガタやるのが気になりましたが、ストーブが消えても大して冷え込まず、結構なぬくぬく感で心地よい目覚めの朝を迎えました。
隣のおっさんは5時前に起き出して、弁当はここで食って出掛けて行きました。
森林限界を超えて最初に見えた赤岳の頂上
朝飯を食べて準備を整えて歩き出したのが7時20分でありました・・・トイレは済ませたんだけれども、今イチなんだよなぁ、と思いつつも、昨日の喧噪はどこへやら、ほとんど人が居なくなった赤岳鉱泉の様子から、この分なら野糞も行けるであろうと踏んで出発と。
で、歩き始めて30分程行くと身体が温まり、やっぱしそう言う事になる訳で、八ヶ岳連峰への記念すべきマーキング、シラビソの林で敢行した次第であります。
で、行者小屋で道は二つに分かれて、アッチはこうで、コッチああだ、と説明を受けたんでありますが、性格的に左巻きの道が好きと言う事で、地蔵尾根と言う方を選択した訳であります。
で、森林限界を超えるまでの道は、とても親切に手すりやら梯子やらが施されておりまして、とても登り易いと言うのがおっさんの感想であります。
しかし、コレから積雪が増えたら階段など雪に埋まってアレコレ、などども考えられますが、たぶん、もっと雪が積もった方がそれらの箇所は歩き易いんじゃないのか?とおっさんは思いました。
で、シラビソやらコメツガと言う、東北ではあまり馴染みの無い森林の中を抜けて、ドドーンと森林限界を抜けると、絶景が飛び込んで来た訳であります・・・申し訳ない程の快晴であります。
赤岳の斜面から見通す先に富士山が・・・
まず、アイゼンを普通に履いて歩ける人なら誰でも登れる、それが赤岳のルートの感想でありまして、下調べした雑誌や本の内容は、恐らく厳冬期の一番厳しい条件を想定した物なのでありましょう。
はっきり言って、600メートルの標高差とこの雪と氷の感触は、厳冬期の三峰や船形山の方が各は上だろうなぁ、と、シャキシャキと決まるアイゼンの気持ちよい食い込みを感じつつ、おっさん流の「長シャフトピッケルざくざく刺し歩行術」を駆使して、急登であると言われた箇所もまずまず、緊張感も無く通過して、9時50分・・・歩き始めて2時間半、ガイドブックのコースタイムとピッタリの時間で山頂到着でありました。
ただ唯一おおスゲェー、と、思ったのは突風でありまして、時折ビヤぁーっと吹いて来る風に身体を煽られ対風姿勢を構えたのが2〜3度有りました。
赤岳への登りと、赤岳山頂小屋
山頂空の眺めは絶景であります。
北アルプス・南アルプス・富士山・浅間山・・・ナンだか良く分からないですけれども、兎に角、高そうで偉そうで険しそうな山並みが累々と連なっているのが見える訳であります。
赤岳山頂に立つおっさん
あんまし寒くも無かったので(マイナス5度)ゆっくりとお茶を飲み、ビスケットなど齧って風景を堪能しました。
で、本当は隣の地蔵岳に行くつもりだったんでありますが、突風が凄い訳です。
これはなぁ、技術的に云々と言うよりも、ザイル結ぶ相手が居ないとヤバイよなぁ・・・飛ばされたら、飛ぶよなぁ・・・止めぇ、と。
いや、おっさんは赤岳を絶好の天気の日に、しかも前日に程良く雪が積もったと言う絶好のチャンスに登ったので、かなりラッキーで楽に登ったと言う事だろうと思うんであります。
なんと申しましても、2899メートルでありますからね。
で、せっかく来たのにピークハントは赤岳山頂のみと言うのは寂しいのでありますが、しかし、まあ無理していたい目に遭うのも嫌なので、んじゃぁ次なる目標は昼飯を12時に赤岳鉱泉で食う、と言う事で、下山開始でありました・・・10時15分。
途中、稜線の岩場で催しまして、烈風吹き荒ぶ2800メートルの岩陵にて、見事に用足しをして来まして、おっさんの野糞の最高地点記録更新がなった訳であります・・・いやぁ、北アルプスにケツを向け、富士山と対面でする野糞は壮快でありました。
12時05分、赤岳鉱泉着。
12時45分、赤岳鉱泉出発
14時15分、美濃戸の駐車場着
いや、魅力的な山なので、残雪期に岩陵をつないだ縦走などしてみたいなと思いつつも、しかし、遠いよなぁ・・・と。
この話 完
山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・
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こちらで、承っております・・・
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