よたよたと、山登り


    No.78

       

     泉ヶ岳 スキー登山

         1月30日 日曜日 晴

     40年振りのスキー登山

         今年の初山行で小荒沢林道を行った時に千葉B氏がスキーを履いて来たのであります。
    で、スノーシューでラッセルに悪戦苦闘する中、楽だとは言わないけれども、スノーシューよりは遥かに沈まないスキーはおっさんの羨望の的と成っちまった訳で、スキーが欲しい、と。
    で、それには少なからずの勝算があってスキーも良いなと思った訳で、目星を付けたブツが既に存在していたのであります。

     先月号の山と渓谷でありましたか、ス○ーランブラーと言うスキーの広告を見つけ、すぐさまネットで検索を掛けて調べてみた訳であります。
    うむ・・・ブナの森を散策するのに良いものであるとな?登攀能力向上に腐心したとな?スノーシューと違って滑って下れるのが利点とな?・・・良いことずくめじゃないかい?と、言うことで逸る気持ちを押さえること無く購入に踏み切ったのでありました。

     待つ事久し、たった一日の翌日・・・早速届いたス○ーランブラーを眺めつつ、ふむふむ、出来そうな奴じゃなと悦に入ったのであります。
    まず、おっさんがこのモノを買うのに一番の決め手としたのは、青森の老舗のスキーメーカーであるブルーモリスの作であることでありまして、ここのスキーなら変な物は無いだろう、と言うことでありました。

     1月30日・・・場所の選択は迷いました。
    いつものように船形山方面で、升沢キャンプ場から林道を歩いて氾濫原でも行って見るか?
    なんなら三光の宮まで行っちまったりするのも良いな・・・しかし、ス○ーランブラーの実力が未知であるからあんまし冒険は嫌だしな・・・よし、泉ヶ岳の山頂で鍋焼きうどんを喰おう、と。

     
    これが新兵器のス○ーランブラーの全容だっ!!!

     さて休日の泉ヶ岳の駐車場は500円を徴収される訳ですが、おっさんは気持ち良く支払い、奥の方のトイレに近い所に陣取り、準備を始めた訳です。
    すると、隣のグループもスキーを取り出しており、どうやらTG高校の山岳部のようでありました・・・おっさんも40年前、初めてスキー登山をしたのは山岳部の備品を借りてでありましたっけ・・・初々しいなぁ。
    で、自分のセッティングを始めた所、ビンディングが締まらない訳です・・・家でセットしてみたんだがなぁ?足を入れないで靴だけでセットしてみたからかなぁ?と、言うことでビンディングを眺め回してアジャストする方法を探った訳です。
    おっ、ネジを外して穴を変えると少し伸ばせるんじゃないかい?と、やってみるとかろうじてはまって、なんとかセット完了。
    しかし、ナント無く頼りないビンディングだなぁ、こんなんでブチ壊れないのかなぁ?泉ヶ岳にして良かった、と。

    この凸凹ギザギザが前には進むが下がらない・・・はずなんだけれども

     駐車場の圧雪路から歩き始めて直ぐ、ス○ーランブラーに不安を覚えたのは、緩斜面なんで後には下がらないのだけれども、横にずれてしまって進行方向を保持する能力が極めて低い訳であります・・・これではコントロール不能じゃないのか?と。
    まず、しかし否定的なことばかりを感じていてもしようがない訳で、確かに商品紹介のホームページでもスキー場などの圧接面では塩梅は良く無い旨が書かれていたのだから、と気を取り直して進んだ訳であります。

     30分程行くと先ほど先に出発したTG高校の山岳部が温度調節で服を一枚脱いでいる所に追いつきまして、顧問と思しき人が「先に行ってもらえ」と指示など出した訳です・・・うひゃぁ、高校生にケツを追われるのもキツイなぁと思ったんでありますが、ここは一発おっさんの実力で目にもの見せてくれようと踏ん張った訳であります。
    しかし、おっさんが喘ぎながら必死に逃げを打っていると言うのに、高校生どもは、涼しい顔で捲り上げて来る訳であります。
    で、お別れ峠への分岐を過ぎて少し進んだ辺りで、ここから直登すれば滑降コースへぶち当たるであろうと言う感で、いよいよ、ス○ーランブラーが得意だと言う新雪の雪原へ踏み込んだのでありました。

     まず,結果から申し述べれば、しまったモノを履いて来ちまったぞ、でありまして、傾斜が20度を超えると真っ直ぐは登れないのであります。
    で、長さが135センチと短いので取り回しは楽なんでありますがしかし、それは浮力もあんまし無いと言うことな訳で、なんだか中途半端なダメなスノーシューに似ているなと思うのでありました。
    思い起こせば一昨年、最初にネット通販で安く買ったスノーシューはたった一度スプリングバレーの駐車場から桑沼まで歩いただけでアルミのクランポン部分が曲がっちまったりした訳で、これじゃぁ山には登れないな、と言うことでMSRを買い求めたのでありました。

    写真では分かり難い、ずり落ち具合であります

     で、標高800〜850の間の等高線が詰まっている訳でして、ここからジグザグに登る・・・いわゆるジグを切ると言う方法で登って行った訳であります。
    やっとこさっとこ、泉ヶ岳を遠くから眺めるとスキー場の上に平らな場所が窺える所まで登って一息入れたのも束の間。
    1100メートル辺りから山頂までを眺めると、絶対にこいつじゃ登れないと確信出来る斜面な訳であります・・・まっ、しかし、行ける所まで行くしか無いよな、と。

    小刻みなジグザグのトレースが分かりますか?

     必死でジグを切り登ってはずり落ち、落ちては登り・・・いや、サイドのエッジが効かないのとビンディングがヤワなので基本とも言える平行に登ることも出来ないのであります。
    しかし、おっさんにも意地がある訳で、40800円も出した代物で泉ヶ岳さえも登れなかったとなっては一生涯の禍根を残すモノである訳で、必死で登ったのであります。
    その幕切れは突然やって参りました・・・必死で踏ん張っていたらビンディングから靴がすっぽ抜けたのであります。
    いいえ、切れたとか壊れたんじゃ無しに、後に支えるバネが登りの傾斜に耐えられず靴が下がって前のベルトからつま先部分が抜け、続いて、スキーを持ち上げようとしたら足首部分を絞めていたベルトがすっぽ抜けた訳であります・・・要するに、登攀をする物なのに後へ掛かる重さを支えるのはビンディングのバネだけな訳で、バネが力に負けるとテンションが無くなってすっぽ抜ける仕組みなんですね。
    おっさんはこの時転けそうになり、全体中をストックに預け支えようとして、ストックのベルトがぶち切れてしまいました・・・ああ、痛い損失だぁ。
     
    見事にすっぽ抜けた状態・・・再度の装着がまた厳しかった

     で、もう戦意はとっくに喪失でありまして、時間を見ると1時近くでありました・・・ええっ?スノーシューだと山頂まで2時間で行くのに、こいつで悪戦苦闘して早3時間・・・まだ標高1000メートルか?
    と、言うことで、ス○ーランブラーを脱いでズボ足で下ろうかとも思ったんでありますが、まかり間違ってもこいつだってスキーの端くれ、下りはそれなりに役に立つんだろう、と思い直し、悪戦苦闘の末最装着でありました。

     で、結論から申しますと、斜滑降が出来ないスキーと言うのはコントロール不能な訳です・・・これは直滑降しか出来ません。
    で、皆様はスキーを止める時にドーしますか?普通の人はテールをずらして制動を掛けますね?これは横に向けられない、斜滑降体制に入れない訳でありますから、直滑降をし出したら、平らな所まで止まらない訳です。
    山の中には木も生えている訳で、それを避ける術も止まる術も無いスキー・・・まっ、滑走面に凸凹が有るので暴走はしないと言えばそうなのですが、たとえ緩いスピードでも唐松にぶち当たったらやっぱし痛い訳であります。
    はっきり言いますが、おっさんのスキーの腕が有ったから無事で下って来られましたが、一般シロートでは泣きが入ったか、怪我をしたかでありましょう。
    まっ、その前に普通は使うのが嫌になってソコまで登らなかったとも言えますが。
    いや、おっさんがスキーが上手いは嘘でありますが、しかし、転ぶこと20回程度、一度などはフロントロールで突っ込んで眼鏡を失い雪の中から必死で探し出す始末で有りました。

     そんなこんなで滑降コースを必死で下って来て駐車場に辿り着いたのが2時半過ぎでありました・・・たった4キロ程度の下りに1時間半ですか?参りました。

     で、スノーラン○ラーの発売元へ直ぐにメールを出しまして、この製品の欠点と、販売の姿勢に問題は無いか?と問い合わせた所、かなり丁寧なご返事を頂き、なんとぉ、一度使っているにも拘らず返品の上全額返金で対応したいと申し出られた訳であります。
    と、言うことで、おっさんの久しぶりの山スキーは結果的に新製品の無料レンタルであったと言うことで、そうなれば心は一気に軽くなる訳でありまして、良い山であった、貴重な体験であったとなって終わる訳であります。

     と、言うことで、発売元はとても真面目な対応だったので、ホントーのことはホントーのこととして書きましたが、検索などで引っ掛からないように、商品の実名は伏せました、と。


     この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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