よたよたと、山登り


    No.79

       

     升沢遊歩道 周遊

         2月13日 日曜日 曇り/雪/晴れ

     遊歩道と呼ぶかい?

       2月11日金曜日、千葉B氏から電話が入り「升沢遊歩道の下見に行くんだけれども、行かないすか?」とのお誘いがあったのであります。
    おっさんも日曜日は休みでありますし、特段の用事も無い訳ですから、二つ返事で同行を決めた訳であります。
    で、有り難いお言葉に・・・「昼飯は準備しますから、個人の準備は行動食程度で・・・」と言うのが有った訳です。
    いや、食い物に飢えている訳ではないのですが、近頃では、千葉B氏が作る「山飯し」が、色んな意味で楽しみになっちまっているのでありまして、山行には欠かせない物となっている訳です。

     なんと言う奇遇なのでありましょうか?今月号の山渓の特集が「やまごはん」でありまして、山で美味い飯を食うのは今時のトレンドである事を物語っている訳です。
    いや、千葉B氏から「山飯し」を提供してもらうようになって、おっさんは二年目ですが、彼が此の手の事を始めてからは随分と歴史がある訳でして、山で美味い物を喰う事にかけては先駆者であると断言出来るのであります。
    本日の昼飯しに関しましては後ほど・・・。

       
    升沢キャンプ場のトイレがこんなに雪に埋まっているのは初めて見ました

     正確な時間などは覚えていませんが、概ね八時少し過ぎ頃、升沢キャンプ場方向へと「五蔵橋」を渡って行ったのでありますが、すでに雪は膝近くまである訳で、この所の深雪ラッセルで進めなくなって敗退の事態がチラッと頭を過りました。
    しかし、なんと言っても本日は遊歩道の周遊でありますから、そんな大した事にはならないと確信していたのでありますが・・・。

     千葉B氏と三浦S氏は来年の今頃、船形山のブナを守る会の山行で此のコースを案内するのでその為の下見なのであります。
    やっぱし、コースの下見は似たような条件でこなすのが一番良い訳ですが、しかし、来年は超暖冬で雪が無いなんて事は・・・考えるとややこしいので止めましょう。
    下見でありますから要所には赤布を打ち、危険箇所なども見ながら行くのでありますが、千葉B氏はここの遊歩道の隅々まで歩いて知り尽くしているのに、なおも危険箇所などの確認をする訳です・・・恐れ入ります。

     で、おっさんは殆ど空っぽのザックを背負って一番後から鼻歌まじりに付いて行く訳ですが、正直に申せば、昨年此のコースの途中から大倉山へ上がる近道をしようとして失敗し、トンでも無い斜面などを這い上がったりで苦労している訳です。
    なので、ホントーの気持ちとしては、茫洋として分かり難い地形に、千葉B氏がコンパスと紙地図一枚でドー対処するのかと楽しみな部分も有ったりした訳です。
    まず、結果から申し述べれば、自分から言っていた、割山小滝から先、国土地理院の地形図と現在のコースが違って来る所までは問題ないが、そこから東方向へ折れるタイミングが良く分からない、と言った通りになった訳です。
    と、言う事で、割山小滝までは夏道通りに近いコース取りで難なく到着でありました。

     
    おお、アレに見えるは、すりばち沼が氷結している珍しい姿、と大はしゃぎ

     おっさんは用心深い方なので少しでも分かり難い道には赤布をビシバシ打っちまうんですが、千葉B氏は環境に配慮して本当に必要と思われる所に打って行く訳です・・・・ああ、おっさんも見習わなくちゃなぁ、と。
    で、昭文社の登山地図には升沢遊歩道はきちんと載っているんでありますが、積雪期で夏道の赤ペンキも見えたり見えなかったりのこの時期は、はっきり言ってシロートにはルートファインディングは無理だと思います。
    で、んじゃぁGPSを頼りにと言うのもこのコースではダメでありまして、ピークを目指すのではないのでとても厄介な訳です。
    で、もっと始末に悪いのは、夏道は、どの地図のコースとも微妙に違うし、割山小滝から先はもっと決定的に違うので、地図を読んで進む事が出来ないのであります・・・登山地図が概ね合ってますが5万分の1なので読みも大ざっぱになり、やっぱし難しいと思う訳です。

    氷結したすりばち沼を渡る千葉B氏・・・おっさんもおっかなびっくり後に続く

     しかし、流石に千葉B氏でありまして、すりばち沼なども見える前から「その先がすりばち沼でやんす」などとしっかり把握しているのであります。
    で、時折、大勢で来る時の事を考えてか、急斜面も直登せずジグを切ったりかわしたりとして進むので後続のおっさんは益々楽チンでありまして、ホントーに楽しいスノーハイクになったのであります。

     で、すりばち沼なんでありますが、こんなにも幻想的な風景が他にあるだろうか、と言う程に静かでやさしい雪原が真っ平らに広がっている訳です。
    で、まっさらな雪原に千葉B氏がすいすいと歩み寄り、さくさくと踏み込んで、ずんずんと渡って行ったのでありました。
    おっさんは、幻想的で真っ平らな雪面に、ウサギやカモシカの足跡さえ無いのが少し気になったんでありますが、千葉B氏が落ちないのを見て渡った訳であります。
    まっ、良くよく考えれば隠れる所の無い雪原にウサギが身を晒すはずは無い訳で、カモシカもしかりでありましょう。

    割山大滝であります・・・千葉B氏はこれの源頭を見ているそうです

     すりばち沼横断と言う思わぬ大イベントで盛り上がって暫く行くと、今度はこのコースの最大の呼び物「割山大滝」に出会す訳であります。
    しかし、まあ、世の中には大滝と名のつく滝は数々ありますが、こちらの割山大滝はかなり控えめで小さな部類の大滝でありまして、眺めて感嘆する類いのモノではないかも知れないとおっさんは思います。
    しかし、この滝は冬にこそ見るべきでありまして、その姿はとても不思議なんであります。
    たいていの山の中の滝は完全氷結とまでは行かなくても、流芯以外の所は凍っちまう訳であります。
    で、大きなつららを従えて勢いの強い部分だけがとうとうと流れ落ちる、と、言う風なのが普通なんでありますが、割山大滝は違います。
    どこにもつららなど見られないし、飛沫が飛んで出来る氷も殆ど見られない訳であります。
    この事に関しては一応、千葉B氏の見解の、水源が伏流水なので常に温度が高いからである、と言うのが当たっているとおっさんも思うんでありますが、しかし、沼は人が渡れる程に結氷する気温の場所で、滝は飛沫さえ凍らないのは、地面が温かいのか?なんて事も思ってみたりする訳です。

     
    個性的だ、で済むような姿態ではない。生い立ちに何があったのか聞いてみたい

     さて、次に現れましたのが「割山小滝」なんでありますが、大滝があれですから、小滝はもっと小じんまりとしていて、敢えて小滝と名付ける必要は無いだろう、と最初は思ったんであります。
    しかし、少し離れて滝を囲む全体の風景を見ると、そこには日本画の世界とでも申しましょうか、山紫水明の侘びと寂びが展開されている訳で、成る程なぁ、粋な命名であるなぁ・・・しかし、そろそろ腹減ったなぁ、と。

    雪の無い時の方が日本庭園風で趣きがあると千葉B氏が言う、小滝です

     そんな訳で、歩いていると、見る物総てが面白くて、ピークハントでは味わえない雪山の楽しさにどっぷりと浸りつつ、本日の昼飯し場・・・小滝の少し先到着でありました。
    毎度、千葉B氏におんぶに抱っこでありまして、しかし、それが本日は何が出て来るのかなとの楽しみになっている訳で、固唾をのんで段取りを見守る訳であります。
    で、とりあえず、ナンボ寒くても泡が出ないと気が済まない訳で、プシュっと軽く缶など開けて、千葉B氏のお手前を眺めるのでありました。

    小雪の舞う中で手早く温かい食べ物を用意するのは難しいのですが・・・

     本日のメニューは「男の山飯し・茶漬け風」・・・は、千葉B氏の了解も無くおっさんが勝手に名付けちまいましたが、まっ、当たらずとも遠からずでありましょう。
    ご飯に熱湯を掛け熱くして、お茶漬けの素を振りかけ、きざみネギや海苔、わさびを添え、厚切り焼豚をのせ、温泉卵を落として出来上がり・・・文字にするとこんな感じですが、これを雪の中で素手でやるのはとても厳しいと、眺めていただけのおっさんでも思う訳です。
    で、ミソと言うか、肝は・・・スピードでありましょうか?
    なんと申しましても気温が低いのでもたもたしていてはお湯が冷めちまう訳で、三人前を手際よく仕上げるには、自然の段取りが総てなのであろうなぁ、と、喰うだけのおっさんは気楽に考えるのでありました・・・ごちそうさまでした。
    いや、味は申し分無く美味い訳で、今更触れるまでもない事なのであります。

    看板の真ん中辺りが熊に齧られて欠けています

     さて、一服しました直ぐ先に「割山断崖」がありまして、看板など整えられているのであります。
    が、しかし、近寄ってみるとなんか様子が変なんでありますが、雪で白一色だと遠近から立体感から妙に狂っちまう訳で、変だなぁとは思っても正体がつかめないのであります。
    で、近寄ってしっかりと見れば、妙な部分は熊が齧って毟り取られている訳で、今は看板をちゃんと読むのは困難な有様です。
    このような標識や道標や看板は山の中の至る所にある訳で、ペンキやニスなんかの溶剤をつかった木製の看板はかなりの確率で熊に喰われますから、お役所の人も工夫した方が良いとおっさんは思う次第であります。
    で、この看板は秋も深まって人が訪れなくなってから齧って心置きなく戯れたらしく、熊の毛がたくさん引っ掛かっていました。

    熊の毛です・・・もっと剛毛かと思っていましたが

     さて、ここからでありました。
    割山断崖を過ぎてからは千葉B氏もルートに自信が無い、と語っていたのでありますが・・・いや、自信が無いと言うのは正確に夏道をトレースする、と言うレベルな訳で、概ねあっち,程度のレベルではない訳です。
    で、ここからは地図が当てにならないので、地形と夏の記憶を元に行く訳です。
    しかし、万が一こっちへ行ったらドーなるんだ?と言う方へ廻って本流の沢の上に出るなどして確認をしたので、あの辺りで間違う事は無いと言う程に完璧に把握した訳であります。

    熊の爪痕です。これは降りる時の物だそうです。

     で、このコースの肝と言いますか、ツボとなるのが、二本の橋でありまして、これを正確に捉える為のルートファインディングが必要なんであります・・・まっ、おっさんだと勘なんですが、千葉B氏や三浦S氏はルートを覚えたようであります。
    いや、けっこうややこしいですよ・・・まっ、時間に糸目を付けずにウロウロすればいずれ橋は見つかるでしょうが、ドラクエのダンジョン程度には厄介ですよ。 逆回りだとすごく簡単かもしれませんので、積雪期は下から入って上に抜けるのがベストかも。

    五宝橋です・・・これを渡ると直ぐに県道に出ます

     一周して6キロ弱、昼飯し休憩と寄り道や樹木の観察タイムなども入れ、のんびり廻っても5時間で十分でした。
    山頂を目指さない山歩きに目覚めた今日この頃・・・昨年秋から一度も山頂に登り切っていない訳ですが、山歩きでもこんなに楽しいんですから、もう少し雪がしまるまではピークハントはしなくても良いかな、なんて思うんですが・・・軟弱ですか?

    本日のルートの軌跡・・・単純に見えるんですかねぇ




       この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


    ご意見ご感想は こちらで、承っております・・・


    INDEXに戻る 次のページへ