よたよたと、山登り


    No.81

       

     山なんか登ってる場合か?

         4月 07日 木曜日 曇り時々本曇り

     やっぱし、山だな

       今年は3.11の地震で冬のイベントが全て中途で打ち切りになっちまいまして、スキーだの山だの言っている場合じゃ無くなっちまった訳です。
    しかし、能天気を旨とするおっさんとしては地震や津波の被害で辛い思いをしている方々を尻目に、ガソリンさえ手に入ったら速攻で山に行くもんね、と不届きな考えを持って待っていた訳であります。
    アレです・・・電気・ガス・水道などが無くなったり、風呂に入れなくなるなどのサバイバルは山に登る者には大した問題ではないと言うよりも、慣れた事な訳であります。
    で、この度は日頃肩身の狭いおっさんの山の道具が大活躍でありまして、無駄に沢山あったガスカートリッジなどは値千金に輝きまくった訳であります。
    まず、これからは山に行くぞと言うのもだいぶ言い易くなったんじゃないかい?なんてのを思ったりしたのでありますが、それはやっぱし勘違いでありまして「こんな時でも山に行くのぉ?」と、顰蹙を買いながら出掛けたのでありました。
    途中コンビニに寄ったんですが買えたのはお茶だけで、おやつになりそうな甘い物やおにぎりは何も無く、万全の昼飯を準備して来なかったら危なかったな、と・・・。
    白石スキー場の建物の外観などには損傷は見られず、リフトなども見た目はなんとも無さそうなので来シーズンは大丈夫、とおっさんは確信した次第であります。
    しかし、電気が止まっているのか、自衛隊の電源車がきて発電しておりました。

       
    白いしスキー場のBコース斜度38度の上から見渡しました

       いつものように登山届けを出しに小屋ヘ行くとおっさんの前の人の登山届けが有りました。
    で、紙の日付を見ると3月6日でありました。
    ああ、やっぱしこんな時に山に来る人なんかい無いんだな、と思ったんでありますが、それは間違いだと後で分かる訳です・・・いや、スキー場の上には不忘までの足跡がくっきりと残っている訳で、日差しなどの条件から考えると恐らく昨日の物かと思うのであります。

    スキー場の上に出ると不忘の全景が見えるようになりました。

     さて、まだタップリと雪が有りリフトさえ動けばナンボでも滑れそうなスキー場のゲレンデを歩いて行きまして一番斜度のきついBコースの下に出た訳です。
    通常は夏道に添ってもっと南よりのAコースの外側を登って行くんでありますが本日はお日柄も良く、雪もたっぷりな訳です。
    んじゃぁアイゼン履いて38度を直登と洒落込みますか?と、最短距離を直登であります。
    いや、リフトで上ると直ぐですし、スキーで滑り降りるとあっという間なんでありますが、これを歩いて登るとなると中々ナニでありまして、はっきり言って疲れます。
    で、本日の空模様は薄曇〜本曇りですが雨や雪の気配はない訳です。
    こんな時はずーっと見通しが利く訳でありますから最短距離を目視しながら歩いて行ける訳であります・・・むふふふっ、天下無敵の直登で行きますか?
    ここから真っ直ぐ最初のピークまで、野を越え山越え一直線に目指しますか?男の登り方ですねぇ・・・と、訳の分からない自画自賛を決め歩いた訳です。

    亘理方面が見えましたが、なんだか茶色く、平らに見えたのですが

     さて、男の直登を決めた訳でありますが森林限界以下では薮が煩い訳であります。
    真っ直ぐ行きたいと思うおっさんの行く手を阻み、時にはあざ笑うかのようにズボッとはまる落とし穴を仕掛ける木々に難儀するのであります。
    何糞、しゃら臭い雑木どもめ、薙ぎ倒してくれる、と意気込んで進んだんでありますが、まっ、一寸避けて迂回する程度の事は直登の趣旨に反する物でもあるまい、と言う事で迂回するように歩き始めた訳であります。
    すると、スキー場の上で見つけた足跡と同じ道筋になる訳でして、人の足跡を辿って登るのを潔しとしないおっさんの気持ちを逆なでするのであります。
    うむ、やむを得ない、と言う事で、再度薮に突入したのでありました・・・いや、これが男の山登りと言うものであります。

    尾根通しに行けるのは後数日でしょうか?

     いつもであれば赤布など辿る訳ですが本日は目指す頂がズーッと見えている訳でそんな必要は無い訳です。
    で、直登して思ったんでありますが、あんまし合理的ではないな、避けるべき薮や谷は迂回するべきであるな、と思ったんでありますが、しかし、このような馬鹿な登り方が出来る日もそうそう無いのでたまには良いか、と・・・。

     さて、1500メートルを過ぎて灌木に邪魔される事も無くなると今度は傾斜が急になる訳です。
    うーむ、成る程なぁ・・・遠回りでも尾根に廻って急斜面を避ける方が結果的には楽で早いのかも知れないなぁ、と、殆どの人が行く赤布の多いルートの合理性などを噛みしめつつ、おっさんは急斜面を登って行くのであります。
    しかし雪面が締まっていてアイゼンが良く利くので楽に登れるんですが、新雪期なら表層雪崩、もっと緩んでも底雪崩・・・ここはヤバイんじゃないのか?
    まず、今日は大丈夫だ、と言う何の根拠も無い自信を胸に、アイゼンの出っ歯を蹴り込んで行くのであります・・・男の登りであります・・・キッパリ。
     
    南屏風から屏風への斜面の雪庇はまだ落ちていません

     長袖のTシャツ一枚で登って来たんでありますが標高1600を越えた辺りで風が強くなり気温も5度程度で寒くて合羽を着た訳です。
    それでも南風が温かく、耳や顔が冷たいと思う事も無く・・・何ぃ?南風とな? 放射能?・・・あいやぁ。
    いや、本日は登っている間中なんか旨が苦しい訳で、やたらと息が上がる訳であります・・・ああ、放射能の影響か?と思ったのは嘘でありまして、不忘山頂の下の尾根まで2時間を切って登って来た訳でオーバーペースだったのであります。

    南屏風から屏風までの見事なスカイラインです

     雪が多いと山頂まで尾根通しで行けるので楽なんですがもう少しするとハイマツとシャクナゲが頭を出しちまって厄介になる訳です。
    不忘に登るんなら4月の今頃が一番楽なんじゃないかとおっさんは思います・・・今年も昨年と一日違いで楽に登れました。
    で、今年は雪が多いと言われるし、実際スキー場の雪は昨年の比ではないのですが1600メートルから上は逆に少ないんじゃないのか、と思うんであります。
    何となれば不忘山の硯石側からの登山道は見える範囲では殆ど雪も無く山頂の雪もすっかり融けているのであります。

    山頂で記念写真

     山頂から南屏風に行こうかどーしようか激しく迷った訳です・・・時刻は11時50分、で、時間的にはギリギリです。
      で、何気に一歩二歩と山頂を越えて行った訳ですが、どーしても脚が重い訳です・・・いや、半端じゃなく重いんです。
    しかも、いつも山を歩いていて空腹なんてのは感じないんでありますが猛烈に腹が減っている訳です・・・ああ、バテる前兆だなぁ、と言う事でおにぎりを一個喰って下山する事に決定であります。

    不忘山頂から南屏風への稜線・・・美しです。

     そんな訳で下山と決まったら何処かに腰を据えて熱々のラーメンなど喰いたい訳ですが風は西に変わって強くなり、コンロを出してゆっくり出来る場所が無い訳です。
    昨年鍋焼きうどんを喰ったダケカンバの木の根元は風がぴゅーぴゅーでダメでありまして・・・よしっ,一気に下の平らな所まで掛け下って昼飯にしようと決定・・・目標、ダケカンバの林。

    おにぎり、ミソラーメン卵入り。ビールにオレンジとコーヒー・・・豪勢です。

     さて、下りは早いです。
    1705メートルの山頂から1200メートルのダケカンバの林まで30分も掛からずに下りまして、風よけの木の根元でランチタイムであります。
    風を避けて座り込んだダケカンバの根元は薄日が射してきまして、絶好の日溜まりランチタイムとなった訳です。
    30年間愛用のコッヘルに水を入れガスに掛け湯が沸くのを待つ間にビールなど飲む訳であります・・・つまみは風の音と目の前の木の芽、などであります。
    本日は、高校生の時に食い過ぎたのが原因で大嫌いになった、まるちゃんのミソラーメンであります。
    コッヘルの中のラーメンを見つめつつ、出前一丁とこれを何百食煮たな、などと感慨深い物を思う訳でありまして・・・無情であります。

     ラーメン喰ってビール飲んで、このまま下っちまうと車に乗るのに宜しく無いと思うので、身体半分の銀マットにひっくり返って昼寝を決め込んだ訳であります。
    ビールでぽーっとする頬に気持ち良い風を受け目を閉じると、今まで気づかなかった小鳥の鳴き声など聞こえ、うとうとしてしまいました。
    合羽の上下を着て居たんでありますが雪の上にはみ出した尻が冷たくなって目を覚ましたら既に一時間程も経っておりました。

     薄日が射す穏やかな春の残雪期の山はさながら天国でありました・・・やっぱし、山はいいねぇ。



       この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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