よたよたと、山登り


    No.90

       

     気になっていたあの山へ・・・その3

         5月20日 日曜日 雨/くもり

     本日の山行はおっさんの独り山でもなく、ご神体の不動岩に登った「罰当たり組」でもなく、船形山のブナを守る会の山行でありました。
    本来この時期には会の行事として植林地の下草刈りとか除伐とかをやるんでありますが、この度は震災の後で様々条件を鑑み、定例行事ではなく、さらっと船形山のブナ林を歩いて山の生気を吸い込んでみましょうか、と言うような趣旨で行われたのかな、と・・・まっ、これはおっさんの勝手な推測であります。

     で、まほろばホールに集合する頃にはちょうど本日一番の強い雨の時刻でありましたが、その後は程良いお湿りが終日続きはしたものの、ブナの若葉を愛でるにはちょうど良い小雨であったと言う事で、今の時期の若葉を見るなら小雨が一番だよと、またと無い散策日和で有りました。

     自分は震災の影響も軽微で既に日常生活は震災前と何も変わっていないのでありますが、参加者の中には未だに震災真っただ中の参加者もおられた様子で、なにかに付け震災や津波の話しが出ていたんでありますが、下山に向う頃には、やっぱしブナの森は人の心を癒すのか・・・まっ、的外れかもしれませぬが、何か重い物を一つ、ブナの森で降ろした人もいらっしゃったかも知れない、なんて、適当な事を言って見る訳でありますが・・・。

     総勢37〜38名の参加者であったと伺いましたが、皆さん久しぶりの山道の感触に喜びを隠せない様子でありまして、雨だと言うのに傍目には嬉々として歩いているように見えたのであります。
    今年は特別豊作だと言うブナの実と、既に役目を終え残雪の上に無数に散らばる雄花に男の性(さが)の無情などを語りつつ、じっくりと山を踏みしめて歩いているようでありました。

     二週間前には見られなかったショウジョウバカマも今が見頃となり、シロヤシオやムラサキヤシオ、そして、おっさんの好きなタムシバも雨に洗われ何時に無く色っぽい白を見せつけておりまして、皆さん、それぞれに花に見とれ、また物知りな人がさらっと加える蘊蓄に耳を傾け、20番の標識辺りまでをのんびりゆっくり歩いたのであります。

     さて、19番か20番からブナ平に行けたら良いね、と言う事で向ったのでありますが既に残雪はほとんど無く、相当な薮漕ぎを強いられる事が確実な様子の為、無理して行ってもなぁ、と言う事で本日はこの辺りで昼食となった次第で有りました。

     で、本日も「罰当たり4人組」は千葉B氏とY嬢が昼飯の支度をして来てくれた訳ですが、これが、段取りと言い、食べた食事と言い、まずまず、雨の山でこれを喰いますかぁ?・・・と、言うよりも喰える状態にする工夫をして来た千葉B氏に脱帽であります。
    いや、ネタを明かせば小型のタープを適当な木に括りつけて屋根を掛けたと言う事な訳ですが、ツェルトじゃなくてタープ(ツェルトのフライなんだそうですが)を持って来た所が千葉B氏なんでありますね。
    そんな訳ですから、雨の降る中で「罰当たり4人組」はコンロの火を使い,美味い物を濡れずに食べた訳であります。

     えっ?・・・ナニを喰ったんだと訊きますか? いや、たぶん山でこれを喰った事のある人はとても少ないと思うんでありますが「コーンフレーク」・・・要するにシリアルであります。
    普通にちゃんと牛乳を掛けて、スプーンでしゃくしゃくと食べたのでありました。
    で、この時おっさんの胸に去来した思いは・・・なんだかニュージーランド人になったみたいだなぁ、でありました。
    いや、ニュージーランドの人の山での昼飯がコーンフレークであるのかドーかは、おっさんも知りませんけどね。

     で、一番遅くまで飯を食っていた訳ですが・・・いや、やっぱし雨なんで落ち着いていつまでも飯を食っている状況には無い訳です。
    しかし、千葉B氏の提案で、黒森山攻略の絶好の場所にいる訳だから速攻で黒森山に登って帰ろう、と言う事で話しがまとまり、わらわらと登ってずるずると降りて来て、先行する皆を追い掛けた訳であります。

     いや、黒森山なんて余程の船形山フリークでないと存在さえ知らないと言うか、知っても気にもならないと言うか、そう言う山な訳であります。
    ですから夏道は無く、行くなら積雪期なんでありますが、これがまた中途半端な場所にあって、上に登っている時には立ち寄り難く、んじゃぁ下山の時にと言うにも、これまた立ち寄り難い訳で、おっさんはずーっと登り切れていなかった訳です。
    で、この度、昼飯の場所が黒森への尾根の肩と言う事で、全速力で駆け上れば10分強で行くであろうと・・・いや、ホントーに息が切れました。
    しかし、罰当たり4人組の他にも数名の物好きが同行し、普段は行けない黒森を、雪解けしたばかりの緩い薮のお陰で登れたのでありました。
    いや、面白かったのは下山の方で、急な日陰の斜面の残雪豊富な所を下った為に滑ったり転んだり、皆さん面白おかしく転げ降りた訳であります。

     さて、旗坂平で皆さんに追いつき、会の行事の最後には恒例の、皆がひと言の儀式が執り行われたんでありますが、参加者の短いひと言にはそれぞれの日々の暮らしや山への思いが凝縮されていまして、おっさんは胸がジーンと痺れて何も言えなくなっちまいました・・・しかし確実に感じた事は、やっぱし、山が好きな人は山に来ると元気になるなぁ、でありました。

     その後は三々五々と言う感じで旗坂の車まで戻り、解散でありました。

     
    氾濫原とは・・・上高地が良く似ていますか?

     さて、解散したのは午後の2時過ぎなんですけれども・・・千葉B氏がコーヒーを飲みに行く、と言う訳であります。
    いや、喫茶店とかミニストップのコーヒーを飲みに行くと言う訳ではなく、旗坂から大倉山に向って行くと存在する、上高地も真っ青と言う、湿原とも違うし、沢沿いと言うのとも違う、独特な場所なんであります・・・氾濫原と呼ばれています。
    そこで花や景色を眺めつつ美味しいコーヒーを飲みましょうと言うのが趣旨でありました・・・いや、毎度の事なんですけれども、おっさんは何もしていない訳で、ただ後を着いて行ってご相伴に与ると言う事なんでありますけれども。

       
    この時期の水量が一番歩き易く美しいかと・・・。

     そんな訳で、南丸松沢を過ぎてすぐの氾濫原入り口まで三浦S氏の車で行くんでありますが、これが結構荒れた林道で車には痛い道な訳であります。
    で、車を降りてからさらっとしたアップダウンを越えて10分から15分で氾乱源であります。
    ここは大倉尾根や長倉尾根の沢の水を最終的に殆ど一手に引き受ける場所でありまして雪解け頃の水量は半端じゃない訳です。
    が、しかし、それらの水の流れを辿っても行く先は忽然と消えちまう訳でありまして、いわゆる伏流水になって地がに消える訳であります。
    そのような特殊な地形からか様々な花が咲き、樹木も大木が育っており、独特の景観を見せているのであります。

     
    この状況で飲んだら美味いコーヒーを見繕って持って来た訳です。

     で、皆さんは準備が良くて長靴で来た訳ですが、おっさんは登山靴な訳で水量の多い沢を渉るのに少し難儀しましたが、それでも、この時期しか見られない、しかも少し小雨に煙っている絶好の条件で見られた事に大感激でありました。
    いや、ニリンソウの大群落とか、シラネアオイの清楚な姿がどーのこーのと言う話しも確かに良いんでありますが、おっさんが感じたのはこの地に流れる悠久の時であります。
    数日間咲き誇って朽ちる花の脇に数百年の時を経てなお立ち続ける巨木がある訳でありまして、そこにおっさんは生命の無情を感じずにはいられないのであります・・・なんちゃって。

     そんな訳で、千葉B氏とY嬢が準備してくれたこだわりのコーヒーとロールケーキをいただいたんでありますが、おっさんはコーヒーも美味いと思いましたが、ロールケーキのなんだか紅茶っぽい香りが絶品であるなぁ、と思って堪能した次第であります。

     しかし、静かな自然の息吹は雨の日に限るのかも知れないなぁ・・・。        


       この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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