よたよたと、山登り


    No.94

       

     羆(ヒグマ)に逢いたくて・・・山へ (楽古岳)

         6月29日 水曜日 曇り時々小雨

     絞ったばかりの夕陽の赤が・・・と言う歌い出しで苫小牧発仙台行きフェリーは出るのでありますが、しかし、今は出港が19時40分なんで夕陽はとっくに沈んじまっています・・・あっ、いや、おっさんは仙台発〜苫小牧行きで到着したのでありました。
    11時に下船しまして一路襟裳岬方面へ・・・知らない土地では、大体分かっていれば細かい事は気にしないで行くのが良いのです・・・これ、鉄則です。
    と、言いつつも、苫小牧から浦河経由で楽古岳の登山口にある山小屋まで150キロ、途中でラーメン喰ってコンビニでビールと弁当を買って、山道で時間を食うのを計算に入れて15時過ぎには到着するな、と、ネットで綿密に調べて来ているのがホントの所です。

     
    楽古山荘と呼ばれる無料の山小屋です

     さて、殆ど迷う事もなくやって来たと言うのは嘘でして、途中の三叉路で勝負をしたらとんでもない所へ出ちまって戻ったり、林道に牛の糞の三倍もあるようなヒグマの糞が転がっていたり、驚いた鹿がバイクと並走して体当たりをされそうになるなど、まずまず、気の小さいおっさんとしては不安で泣きたくなるのでありました・・・いや、良い年をして何が悲しくてスーパーカブで北海道の山に登に来るなどと思い立ったものやら、と後悔気味の始まりでありました。
    とりあえず山荘が見えたときには以外に立派で一晩過ごすのに不自由はなさそうなんで安心したのが偽らざる心持ちでありました。

       
    いや、身も心も落ち着いたら他にやることは無い訳です

     楽古山荘は沢水を引いた水道と、ポットンですがトイレも完備で、しかも、大型のストーブが設置された上に薪は腐るほどあるのです・・・いや、実際に薪は古いのが使い切れずに腐っている状態でありまして、そこから湧いて出るカミキリムシは一寸アレでナニでありましょう。
    で、小雨でもカッパを着ずに走ってきたので大分濡れたんでありますがストーブをガンガン焚いて暑くなった部屋ですぐに乾いて助かりました・・・いや、暑くて寝苦しかったのは失敗でしたが。

    写真で見ると平穏なんですが一人で居るとドーもヒグマが気になって

     そんな訳で夜は8時には寝ちまいましたから目覚めも推して知るべしであります・・・3時20分でした。
    で、もそもそとカップ焼きそばなど食って、コーヒーを二杯ほど飲んで、序でにアンパンなんかも食ってからゆっくりとンコなどして出発したのが4時50分でありました。
    まず、日高の山の中では初歩的な山ではありますが、原始的な佇まいは天下一品でありまして、おっさんの一挙手一投足ヒグマが見て居るんじゃないかと思える雰囲気な訳です。
    で、山仕事に使って廃道になっている感じの太めの林道跡を行くんでありますが、おっさん、地図を持っていないわけです・・・いえ、コピーはあります・・・北海道の山と言うガイドブックから抜き出したやつですが。 で、この山は国土地理院地形図には登山道がないわけです・・・と、言うことはGPSも宛に出来ない訳で、迷ったらドーしよう、エヘヘへであります。
    いや、実際は単純に沢沿いを行き、尾根に取り付いたら登り一方で外しようも無い行って来いの道な訳ですが・・・。
    ガイドブックが沢靴を持っていた方が良いと言うんで、おっさんはフェルト靴を履いて行ったんでありますが、無用でありました・・・飛び石の案配がとても良くて水量はそこそこなんですけれどもなんとか濡れずに渡れるのであります。

     さて、ホントーに登り一方でして、休み所が無い訳です。
    で、1500弱の山なんですが標高差は1200ある訳で、まっ、そう言う事になるのでありまして、結構キツイ訳です。
    視界が無くてヤンだなぁ、と、汗をぶったらして登って行くと、1200くらいの所で森林限界を超えて目の前が開けたのであります。
    おお、あそこへ登って、あっちへ廻って・・・あっちが頂上だな、と・・・いや、全部雲の中で何も見えないんで想像の図でありましたが。
    しかし、ここまで沢靴でズルズル滑りながらも急登を登ってきましたが、こっから先は登山靴じゃなきダメなのが明確な一層の急登が見て取れる訳であります・・・靴履き替え、と。

     
    なんともファンキーな二匹のラッコの山頂標識でありますが、標識はこれだけです。

     何となく沢沿いの道で自信が持てずに時間を食って、山頂到着までに3時間以上を要しちまったのは少し誤算でありました。
    いや、おっさんは登りと下りのスピードが同じなんで時間を稼ぎたい時には登りで短縮しないとダメなんですが、ガイドブック通りの時間を食っちまった訳です。
    で、霧に包まれ、花も殆ど見られず、期待していた日高山脈の稜線なんて欠片しか見えない山頂に用は無い訳で、滞在時間は30秒、自分撮りの記念撮影もせずに下山であります。
    いや、ハイマツ帯に入ってからの稜線は強風で谷側に飛ばされないように身構えるほどでして、カメラなんか出してる場合では無かったのであります。

    なんぼか見えた日高山脈の筋・・・十勝岳方向じゃないかと思うのですがぁ?

     いや、太平洋に近いんで風が強いとは聞いていたんでありますがコレ程とは思わなかった訳で、北海道の山は恐ろしいです。
    で、キバナシャクナゲなんかがナンボか見られた程度でありまして、北海道は花の山と言うのも全部ではないんだよな、と言う事で下山をする訳です。
    途中、ジグを切ってある急登で踏み跡が鮮明でなくなり、どれも踏み跡のようで、でも違うようで・・・迷ったのか?と。
    仕方が無いので5分ほどですが登り返して確実な踏み跡まで戻り慎重に再度下山した訳ですが、獣道なのか踏み跡なのかが判然としない上に、そもそもこの山は人通りが少ない様子でして、そう言う事になる訳です。

     雨で濡れてドロドロのズルズル、木の根やチシマザサも滑る事この上ない急な道で都合6回も転びつつ、熊におびえ霧にやり込められ、ほとんど泣きべその下山でありました。
    で、熊鈴を鳴らしつつも未だ不安なんで、大声で巨人の星とかタイガーマスクとかを歌いながら下山して楽古山荘到着は10時45分でありました。

     いや、この時間なら余裕だろうと言うのはダメなんであります。
    飯を食ってパッキングをしたら300キロ先の西別岳小屋まで走らなければならないのであります。

     


       この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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