よたよたと、山登り


    No.96

       

     ヒグマと遭えるか(羅臼岳)

         7月02日 土曜日 快晴

     本日はこの旅のシンセイ?いや、いこいか?・・・ああ、ハイライトでした、と言う事で、最終目的の羅臼岳登山であります。
    いや、日高の山を登り込むとか、有名な大雪山方面でトムラウシに行くとか、色々迷ったんでありますが、北海道 で一度も足を踏み入れていないのが知床な訳で、これはやっぱし登山を抜いても行きたいと思っていたんであります・・・そしたら登るのは必然的に羅臼岳になるのであります。
    で、当初は羅臼岳から硫黄山までの縦走を考えたんでありますが諸々の条件を鑑み今回は勘弁しておこうと言う事で、羅臼岳のピストンになった次第であります。
    ウトロ側、岩尾別の登山口にある木の下小屋です

     で、北海道の山と言えばヒグマなんでありますが、正直に言っておっさんもビビっていました。
    この辺の山に居るツキノワグマとは格が違うヘビー級の熊でありますから、出合っちまったら最後、戦っても勝ち目は無い訳で、死んだ振りをするしか無い訳です。

     
    ご丁寧に熊注意の警告看板もその気にさせる訳であります。

     さて、標高230メートルの登山口から1659メートルの山頂まで、累積標高差が1400メートルを超えるんで、まずまずそこそこに登り応えがあるのですが、そんな事よりも気になるのはまずヒグマです。
    おっさんはキャンプ場を羅臼側にしている訳で、そこも羅臼岳への登山口になる訳です。
    で、当初はここから行くはずだったんでありますがテントを張った際に数人の人から登山道で熊を見たとか、雪渓で迷ったとかの不穏な情報に触れ大いにビビっちまったのであります・・・いや、雪渓も熊の話しも随分と大袈裟である事は翌日に成って判明したんでありますが、それは後の祭りでありました。
    いや、無事であるのが何よりでして、登れたんで良かったんじゃないですか?・・・しかし、熊に対しては大袈裟過ぎるよな、絶対に。

       
    やっと樹林帯が切れて山が見えましたが、ん?羅臼岳じゃないよな?

     羅臼岳への道は迷いようの無い整備の行き届いた登山道でありまして、正直に言えば日高の楽古岳の方が何倍もワイル度は高いです。
    楽古岳では本気で熊に怯えていましたが羅臼岳ではおっさんの勘が警戒警報を出さなかったんであります。
    おっさんは東北の山でも熊には気を使うんですけれども、それには、臭いを嗅ぐ事や音を聞く事、食痕や糞と、様々な要素に気を配るのであります。
    しかし、羅臼岳の登山道では何処にもその気配を感じる事はなく、熊の目撃情報などがあるにしても、それは出る時期の、何処でもある事態なんじゃないのか?と思った次第であります・・・いや、生意気を言いますが、ホントーに気配の欠片も感じられませんでしたよ、と。

    人によっては4本歯のアイゼンを履いてましたが東北人には不要でした

     そんな訳で道迷いの心配も無く、危惧していた熊の気配もない安心の登山はナンだかお気楽になっちまったのであります。
    で、キツイ登りの後には適度に緩い尾根道が続くあたりはナンだかアレです、船形山の升沢コースみたいでもある訳で、標高差の割りには比較的楽なとても登り易い山であるなと感じました。
    それにしてもアレです、船形山辺りのブナの巨木は美しくて貴重なんでありますねぇ、他の山に登る度に改めて船形山の奥の深さを噛みしめるのであります。

     


     標高にして1300くらいの所で大沢の雪渓と言うのに出てから上は森林限界を超えているようで植物層ががらりと変わって岩場の植物が多くなるのであります・・・山岳的風景と言う奴ですか?
    大沢の雪渓も7月の初めはアイゼンがドーのと言う解説もあるのですが、4月5月の船形山頂下の雪面をキックステップで登るのに比べれば随分楽でして、おっさん的に入らないと思いました・・・いや、背中には10本爪が入っているんですけれどもね。

    名物にキバナシャクナゲがあるらしいんですけど、これ違いますか?

     羅臼平と言うキャンプ指定地まで登ると羅臼岳の岩峰がデデーンと目に入る訳です・・・おお、やるじゃないか、と言う迫力です。
    で、このキャンプ指定地にはフードロッカーと言うのが有って、食い物を放置すると臭いでヒグマがやって来るんで鉄のロッカーに仕舞え、と指示が出ている訳です。
    この事からも知床のヒグマが人に馴れている事が伺われる訳で、人間の食べるものは美味いと既に学習済みな訳です・・・と、言う事で、ヒグマを危険な存在にしちまったのは人間なんでありましょう・・・なんちゃって偉そうに。

     
    これがフードロッカーですが、複数で使用の場合は名札が必要ですね

     さて、羅臼平からはホントーは行ってみたかった硫黄山への縦走路の分岐がある訳で、いかにも登高意欲をそそる美味しそうな険しい山並みが続くのであります。
    いや、熊の気配がこの程度なら行っても良かったなと思ったのが正直な所で、知床の熊警報はこのままだと狼が来たになっちまうんじゃないかなんて思うのは間違いですか?

    ドーですか?厳しそうで誘われる山だと思いませんか?

     硫黄山への縦走を諦めた一つの理由は、矢鱈と熊がヤバいと言われた事ですが、もう一つは硫黄山からの下山路が通行止めなのか、今年は解除なのかが不確かであった為でありました。
    で、ガイドブックでも硫黄山から先は下山せずに往路を戻るのが良いと成っているんで、んじゃあ今回は勘弁してやるか、と言う事に成った次第であります・・・いや、キッパリと安全第一ですから。

    ペンキの指示に従えば楽勝です・・・まっ、何処からでも行けそうですけど

     羅臼平を過ぎると背の低いハイマツ帯を縫って岩陵に取り付く訳ですがこの辺りが羅臼岳の美しさの決め所でありましょうか?
    いや、花の名前を知らないおっさんでもついつい足が止まりカメラを向け、可憐な花達に「惚れてまうやろぅ」と呟いてしまうのであります。

    この短い雪田は下りグリセードで下るのにバッチシでした

     羅臼だけは百名山で団体登山の対象でもあり有名なんで、昭文社の地図ではかなり余裕を見た時間配分に成っているんですが、実際はそれ程野山ではない訳で、軽身が本気で飛ばせば3時間でも登れる山であります。
    しかし、それには団体さんが出発する5時前には歩き出すのが鉄則だと思います・・・おっさんは登山口で20名程度の団体を刺して先に出ましたから。
    ちなみに、5時10分で4組目でありました。

    山頂で気取るおっさんです。

     さて、山頂からの眺めは素晴らしく、湧いては消える雲の動きなどに見とれつつ、たまに切れる雲の間からは北方領土まで見えたりして・・・たぶん・・・またいつもの病気である「帰りたく無い」が始っちまです。
    が、しかし、念願であった知床の一部ではありましたがかじる事が出来、天気にも恵まれほとんど満足の状態で下山開始であります。

     11時40分、木の下小屋到着で、今回の北海道の山は予定終了でありました。

     この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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