よたよたと、山登り
No.99
登攀的沢登り
8月15日 日曜日 快晴〜雷雨〜晴れ
このたびの禿岳火の沢の山行は昨年の南丸松保沢を詰め終わった時に、次はあそこだと決まっていた訳で、予定の行事であります・・・実は、来年も決まっているんですが、それは内緒です。
8月15日と言えば地獄の釜の蓋も開くと言われる日な訳で、まっ、そう言う事ですから、沢登りには絶好の日でありまして、快晴でありました。
おっさんは岩出山の道の駅で千葉B氏とY嬢と合流し、集合場所の古川高校の山小屋に向かったので有りました。
小屋では本日の隊長のK氏と副隊長のH氏が既に待っており、程なくして登攀隊長のC氏が到着し、下山用の車を花立峠にデポして出発となったのであります。
本日のお泊まりは古川高校の小屋なので宿泊の装備は全部置いて行き、登攀用具の共同装備も持たないおっさんは殆ど空身でありました・・・いや、ザイル背負ってる人は大変なんです・・・特に濡れたザイルは重荷ですから。
鬼首ゴルフ場を迂回して林道を行きます。
さて、おっさんとY嬢は火の沢は初めてですし、千葉B氏も遠い昔の記憶なので定かではないと・・・。
しかも、おっさんとY嬢は登攀的な沢自体が初めてな訳であります。
林道をテクテクと歩きながら眼前に広がる禿岳の姿に半ば圧倒されつつも、登攀のベテランと登れるという気楽さはどこかに有って、まっ、登れないという事は無いだろう、などと緩く構えていたのも事実であります。
宮城県のミニ谷川岳と呼ばれる禿岳
林道を歩いて行くと沢の入り口の堰堤に到着し、各自身支度を整えて出発でありました。
いや、この時に隊長や副隊長や登攀隊長のハーネスやらエイトカンの年季の入りようにおっさんは圧倒されたのであります・・・うひゃぁ、シッテイングハーネスの原型を見た・・・そんな感じで有りました。
で、おっさんは、ひょっとすると自分が使うかもしれないベルトスリングを120と60の二本とヌンチャク二本に下降用に使うかもしれないと思いATCだけを持って来たのであります。
しかし、トップを登ろうという隊長や登攀隊長の腰にはカラビナ数枚、ハンマーと沢山の手作りスリングが下がっているのであります・・・ありゃぁ、千葉B氏もそれなりの装備であるな・・・なんだかおっさんはシロートのお客さんになっちまったな、と、少し気が引けるのでありました。
沢に入ってすぐは水量も無く静かな沢でありましたが・・・
標高560で沢に入り、詰め切ると禿の山頂脇に飛び出すのだそうで、標高差にすれば700メートルですから、体力的には楽なはずであります。
しかし、ネットで見た遡行図から拾っただけでも、大小18〜19の滝が有る訳で、手強そうな事はシロートのおっさんでも察しは付く訳です。
しかしも、装備の中にハーケンとかアブミとかが書いてある訳で、と、言う事は最低でもA1にはなる訳で、屁たれのクライマー見習いのおっさんとしては胸が躍るのであります・・・ワクワクドキドキ、と言う奴ですね。
滝を表す時にF2とかF3言うらしいんですが、余裕の無いおっさんには数えてられませんでした
最初のうちは緊張する滝も無く、抜けるような青空に少ない水量と天気にも恵まれ、快適に詰めていたのでありました。
いや、ホントーは、傾斜が急なので一歩一歩が重たいというか、気が抜けないのに皆の速度が速くておっさんはあっぷあっぷでありました。
副隊長が「10年前はどーやって登ったっけなぁ?」と思案中
おおっ、ちょっとは登り概の有る滝が出ましたね・・・と、言いつつも、自分はフィックスが張られてからいく訳でお気楽ですが、トップは緊張するんでしょうねぇ?
で、おっさんは、オールドスタイルの沢屋と今時のクライマーの決定的な違いをこの滝の登攀で見た思いがしたのであります。
古い沢屋は気合いで登り、今時のクライマーは道具で登る訳です。
いえ、道具というのは人口登攀という事ではなく、安全と安心の為に確実なプロテクションをとってから動くのが現代の登り方だとすれば、古い沢屋は「落ちない」と言う気合いだけで身体を支えて登っちまうのであるな、と、おっさんは見たのであります。
まっ、シロートの判断なんでアレなんですけれども、そんな風に見えたのであります。
やっぱしパンツまで濡れるよりは乾いてる方がいいっちゃ、と登る千葉B氏
この程度の岩登りでは紅一点のY嬢でも難なくこなしてしまうレベルにはなっている訳で、まあ、シロートであるおっさんとY嬢でも時間は多少食うけれども泣きを入れるとか進退窮まるという事は無いのであります。
マッキンレーの登攀までこなしているC登攀隊長のビレーは、ロープが遊んでるんですけど?
いや、本音を言えば、おっさん達だけの「罰当たり組」でやっても登れない事は無いと思います。
まっ、生意気な言い方ですけれども、千葉B氏とおっさんはそこそこ登れる訳であります・・・しかも、得意な壁のタイプが違っているんで一番良い組み合わせだと思っているんであります。
しかし、初めての沢で、しかも用心深いおっさんのプロテクションでは時間は掛かります・・・ホンモノの沢屋に言わせたら、ナニをふざけてるんだぁ、と怒られるスピードしか出ないと思うのであります。
この点、千葉B氏は修行したのが古い沢屋の下だったのでどっちも理解できる訳で、事が沢登りの時には全面的に頼る事にしている訳です。
千葉B氏は沢に入ると軽快で一段と生き生きしています
さて、二股を超えたあたりまでは大した障害もなく時間も予定より早く、順調でありました。
やっぱし、楽に登れる原因としては、水量が少ないんで岩が乾いている事につきると思う訳です。
宮城県で一番アルペンチックな禿岳は、ずーっと上まで岩が続いていました。
遡行開始の頃は簡単な滝しか出て来ないのでスピードもそこそこ有ったのですが登るに連れ傾斜が増し、滝も手強くなり、一つの乗り越しに時間を食うようになってきました。
疲れているという感じは無いんですが、小さくても気を抜けない滝が続くので心理的に緊張しまくっているのでありましょうか?なんだか無口になって来るのであります。
この程度の滝は駆け上がって来い、と、気合いで登って行くのであります
おっさん、いつも感心するのはY嬢でありまして、山登りを初めて三年目ですが、まさか山岳会や山岳部に入ったとは思っていないと思うんでありますが、しかし、やっている事はそこそこハードな事ばかりです。
で、この度の火の沢の遡行も、ビビって動けなくなったらお終いなんですけれども、まず、いつも良い度胸であります。
低そうに見えますけどC登攀隊長が乗り切ったてっぺんはかぶってて厄介です
技術的に厳しい箇所のトップはC登攀隊長なのでありますが、これが上手い訳です。
どういう風に上手いのかというと、技巧派というよりも気合派に見えるのですけれども、押さえる所は押さえている訳です・・・いや、人様の登り方をアレコレ言える立場ではないんですけれども、怪しいプロテクションを一つとっただけで乗り越えた所は、おっさんの見立てではあのまま落ちればグランドであったかも・・・なんて思うんでありますが、登っちまうんですね。
俺が行くしか無いんだけども、さぁ、どこから登っぺ?と登攀隊長
ンじゃぁ、と飛沫を浴びて取り付いてみた登攀隊長
しゃっこいなやぁ、と果敢に攻める登攀隊長
いや、おっさんは登攀的な事は良く分からないんですけれども、何も確保されていないトップは度胸が居るんでしょうね?
おっさんがやる岩登りはほぼ百パーセント落ちても大丈夫というか、落ちるのを前提に突っ込む訳ですが、沢登りではヤバイ場所でもプロテクションは少ない訳で・・・いや、近代装備のカムとか持ってないんで、まずは残置頼りで足りなければ自分で打つ、と言うスタイルは、最後の武器はやはり気合しか無いのかと。
Y嬢初めての人口登攀・・・A1でありますか?
登攀も最初の頃のスピードが無くなり、だいぶ時間に追いかけられるようになって来たので・・・と、言うよりもこのパーティーではフリーでの登攀とかには全然こだわっていない訳で、残ったハーケンでもスリングでも遠慮なく利用させてもらう訳です。
その結果、とても古いスリングを引っ張ったらブチっと切れたり、どうしてそれが生きていると確信できるのか不思議なハーケンにカラビナを掛けたりして登っちまう訳であります。
そんな訳で時間も迫っている時に現れた滑りの多い滝では、塩梅の良い所に残置ハーケンが有ったのでアブミを掛けて乗り越しちまったのであります・・・が、それでもここが一番時間を食ったのでありました。
この後、おっさんも見入ってしまって写真を撮るのを忘れたんでありますが嫌らしい滝が現れ正面突破が適わず、千葉B氏がずるずるの草付きからにじり登って切り抜けるという場面が有ったのですが、不覚にもおっさんも手に汗を握って見入っちまって撮ってません・・・ごめん。
本日最後の滝はK隊長が登りましたが、最後の詰めの一手が厳しいんです
さて、おっさんはトップロープで気楽に登ったんでありますが、先頭でロープを引っ張った4人はホントーにお疲れさまでした、とお礼を言っちまう訳です。
火の沢は沢登りというよりも登攀的な要素が多くて岩登り未経験では厳しいのですが、しかし、連れて行ってくれる人がしっかりしていれば案外簡単に登れちまう、というのも事実です。
でも・・・ベテランでこの程度は屁であると言うレベルならまだしも、火の沢がチャレンジコースになる程度のパーティーでは、残置のハーケンはまだしも、下がっているスリングの古さなどを考えると、さっさと自分らでハーケン打ち込んで、アブミでもスリングでもガンガン掛けて、とっとと登っちまうのが良いかも知れません・・・まっ、登らせてもらったお客さんが偉そうな事は言えないんですけれどもね。
満足な笑顔が溢れているご一行様
さて、山頂到着は予定よりも1時間程遅れて3時過ぎでありました。
緊張から解放されたら急に腹が減りまして、ここで大休止の後花立峠までのんびりと下り、後は古川高校の山小屋で宴会へと突入し、狂乱の一夜は更けて行ったのでありました・・・いや、それほどの事も無いんですけれども、毎度の事ですが酒だけは良く飲みました。
そうそう、花立峠では「罰当たり組」の三浦S氏が缶ビールを持って出迎えてくれたんであります・・・超美味かった、ごちそうさまです。
三浦S氏はこの日のメンバーに入っていたんですけれども仕事でやむなく参加できなかった訳で・・・登ってもらいたかったなぁ、と。
この話 完
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