よたよたと、山登り


    No.65

       

    船形山 升沢コース〜蛇ガ岳

       ブナを見に行った・・・?

     6月27日 曇り/霧雨/雨

     約一ヶ月振りに山に行った訳ですが、いや、参りました・・・ナニに参ったのかは本文をご参照ください。

     この度の山行は「船形山のブナを守る会」の行事に参加したものでありまして、おっさんは新参者で良く分かりませんけれども、同じような趣旨で活動されている「丹沢ブナ党」と言う会との交流登山なのでありました。
    で、前日の26日の土曜日は台が森温泉に泊まって、前夜祭と言うか交流会と言うか、親睦会と言うか・・・研究発表会や議論の場であったかも知れない、とにかく、酒を飲んで語り合う時間なども持たれていた訳であります。
      この場で、鹿の食害についての考察が侃々諤々と為されていた訳でありますが、まっ、鹿も生きて行くのに必死な訳で、人間の都合だけでアレコレされたら堪らないだろうな、と言うのがおっさんの偽らざる心持ちでありまして、喰うものが無くなったら自然淘汰されるから・・・なんて言いたかったんであります。
    まっ、しかし、そんなことを正面から言える雰囲気でもないし、言うべき立場でもないと言う事で、おっさんらしくも無く黙っちまった訳です。
    何度も書きましたが、おっさんは人為的な開発で痛んだ自然に対して、再度人為的な手を加えて自然を回復させる事は不可能だと思っている、言わば人為的自然復活否定論者でありますから、まっ、普通に環境保護を目指す人とは相容れない部分も有る訳です。
    ここで字面から勘違いされると困るのでしつこく一言申し述べますが、今ある自然を保護するのを嫌ったり反対するのでは有りません。
    痛んだ自然に更に人為的に手を加えて、再度現状を変化させるのに反対な訳です・・・よく意味がわかりませぬか?
    極端な話しかもしれませんが・・・沼や池や浜辺に捨てられている空き缶をゴミとして拾って環境の美化に努めたと思っていると、空き缶の中には既に小さな生物などが生息していて、自然は空き缶を取り込んだ新たな環境を作り上げていると言う事を考えて欲しいと・・・まっ、こんな事を思うとゴミ拾いも出来なくなっちまう訳ですが。

     さて、山登りであります。
    当日は雨の予報が70パーセントと高く、間違いなく合羽を着ての山行であるなと覚悟していたのであります。
    が、しかし、本日のパーティーのチーフリーダーは千葉B氏で、お天気姉さん的存在のY譲も同行しているとあって、ひょっとすると俺ら一行の上だけは雨雲が避けて行ったりしてな、なんて微かな期待をして歩き始めた訳であります・・・7時15分でありました。
    で、新緑のブナ林の登山道を行く訳でありますが、じつは、おっさん的にはブナ林が一番美しいのは霧雨の時であるな、と思っている訳でありまして、濡れない程度の霧がかかった登山道と言うのを理想としている訳であります。
    しかも、本日はわざわざ関東方面から自然のブナ林を眺めに来ているお客さんを伴っている訳でありますから、出来れば幽玄とも言える程の霧に煙るブナ林を見て欲しいと思うのであります。
    それは、実にあっさりと、ものの見事に達成されまして、ブナの緑が霧雨の水滴に輝き・・・いや、ナント言う事でありましょうか、登るに連れ、時折薄日さえ差し、水滴が輝き若葉の色が変化したりするのでありました。
    前日の強い雨で登山道が少しぬかるんでいるのが見られましたが、升沢コースは中々に水捌けが良く、難儀する程では有りませんでしたから、皆さんの足取りも快調でありました。
    おっさん、記録を取らないので正確には申し上げられないのですが、コースタイムは昭文社の登山地図とほぼピッタリであったと記憶しています。

     しかし、ブナの新緑は見事なんでありますが、花の賑わいとしては結構寂しい時期でありますね。
    かなり標高を上げた所でチラホラと花が見られ出しましたが、下の方は皆無と言える程に地味でありまして、雪解けの直ぐ後の賑やかさが思い出されました。
    こうして見ると、やっぱし雪解け頃と言うのは、残雪がたっぷり有って冬の名残を感じるのだけれども、正真正銘の春なのであるな、と実感するのであります。

     千葉B氏はリーダーとして先頭を歩きながら、相当色々考えていたのではないかと、おっさんは想像を逞しくするのであります。
    と、言うのは「丹沢ブナ党」の皆さんは、旗坂キャンプ場を午後4時出発で泉中央駅に戻って行く予定な訳でして、その後の新幹線の切符も持っていると言う事で、行動時間はそれから逆算してのものとなる訳であります。
    おっさんも某かの引率や先頭をやった経験が有るのですが、そのパーティーの力量と言いますか、足の速さや体力度が全く分からないのに予定を組むと言うのは難しいものであります。
    しかしアレです・・・「丹沢ブナ党」の一行にはまずまず良いお歳では有りませぬか?とお見受けする方も混じっていた訳ですが、これがまた流石に健脚ぞろいでありまして、往復16キロになるコースをなんと言う事も無く楽し気に歩き通した訳で、驚きました。
    これはたぶん「丹沢ブナ党」の精鋭部隊だったんでありますよ・・・いや、普段の活動内容も、何名の会員が居るのかもしれませんけど。

       三光の宮でまとまった休憩を取った他はほとんど軽い立ち休みを挟んで登り続けた訳であります。
    三光の宮を過ぎるとポツポツと花が出て来るんでありますが、おっさんは花の名前を知らないので、なるべく訊かれないようにトボケておりました。
    Y譲が「丹沢ブナ党」の最後尾の方の後に着いていたのでいくらか説明を加えていましたが、それにしてもおっさんは知らなすぎだなと恥じ入りました。
    最後尾の方は時折花を写真に収めるので一行から少し遅れる事が有るのですが,その後のリカバリーが素早く、急ぎ足で列に追いつく訳であります。
    いや、おっさんより遥かに年上とお見受けした訳ですが、その健脚振りは大変なものでありました・・・お名前はメモもしないので失念致しました。

     さて、升沢小屋で荷物を下ろしトイレ休憩であります・・・そして給水ポイントです。
    ここからが本当の登山道でして、升沢コース侮り難しとなる訳です。
    その前に支流の沢に入り雪解け水と思しき冷たい水を各人が補給したのでありますが、関東の方々はこの水を美味い、と褒めて下さいました。
    しかし、船形山で美味い水と言えば、大滝キャンプ場か風早峠の水でありましょう・・・なんちゃって、受け売りですけど。
    さあ、船形山に登るのはここからが本番でして、沢沿いの足場の悪い所を岩伝いに飛び、滑り易い岩の急斜面などを歩いて行くのであります。
    おっさん的には積雪期の方が遥かに登り易いなと思うんでありますが、しかし、距離的には短いので大騒ぎする程では有りません。
    登山道にはイワカガミの群生やら、おっさんの大好きなサラサドウダンなんかが見られまして・・・いや、もっと色々有ったんですが名を知らないもので、今ここに列記する事は出来ないのであります。
    後白鬚や蛇ガ岳方面からの三叉路を過ぎると山頂までは一息でありまして、視界も開けて絶景が・・・ガスって何も見えません。
    天気が良ければ松島までくっきり見えるんでありますが、誠に残念でありました。
    山頂到着は11時16分頃でありました・・・メモはしてないので勘です。
    で、山頂小屋の手前には盛りを過ぎたけれどもミヤマキンバイがまだ見られ、一行の到着を歓迎しておりました。

     昨晩泊まった台が森温泉でこしらえてもらったおにぎりを、山頂避難小屋でいただきました。
    おっさんはドー言う訳か小屋へ入って食べたのでありますが、他のブナの会のメンバーは外で食べておりまして、なんだか地元話に引き込まれそうになって困ってしまったのであります。
    なんたって、花の名前も樹木の名前も、鳥の名前も知らないのでありますから、何を訊かれても「はぁ・・ええ、まぁ・・」とあやふやな事しか言えない訳で、会話にならないのであります・・・しまった所へ混じっちまったな、とケツの据わりの悪い30分間でありました。

     千葉B氏から11時50分出発を告げられていた一行は、段取り良く昼食をとり、それぞれにトイレも済ませて時間ピッタリに出発準備が整うと言う、ホントーに歩き慣れている人達なのであるなと感じさせるものでありました。
    そんな訳で出発は予定ピッタリの11時50分でありました。
    下山路は蛇ガ岳を回ったのでありますが、天気の良く無いこのコースは、誰かが言った言葉通り、面白くも何ともないコースになったのであります。
    うーん・・・紅葉の季節にはえも言われぬ美しさを醸し出す湿原と池でさえも、どんよりとした曇り空の下では精彩を欠くのであります。
    しかも、この頃から雨がポツポツと降り出しまして、しかし、合羽で蒸れるか、雨で濡れるか、どっちも大差ないな程度の降り方だった為、おっさんは雨支度はせずに歩き続けました。

     で、湿地帯を過ぎると瓶石沢の出会いの所まで結構な下りになる訳でありますが、おっさんの右足首がここでダメになったのであります。
    少人数の山行ならそれなりにペース配分もしてもらえるのでありますが、しかし、本日の予定は、何が何でも4時前に旗坂キャンプ場到着でありますから、おっさんの都合は言っていられない訳であります。
    いや、おっさんの背中にはヘッドランプも有るし、この道を夜に独りで歩く事もなんとも思っていないのでありますが、隊列から離脱すると言う不名誉を冒したく無い訳でありまして、歯を食いしばりつつ必死で着いて行くのでありました。
    遅れまいとするとドーしても痛めている右足も踏ん張っちまう訳で、それで激痛を得てビッコが酷くなり、ビッコを庇う右足までも痛めてしまったのでありました。
    おっさん、最初はピコタコ程度のビッコだったんですが、その内がに股で着地の角度を変えて痛みを分散させるなど、ありとあらゆる歩行姿勢を試しつつ、ナントカ下って来た訳であります。

     瓶石沢で升沢コースに合流すると幾分なだらかになり足へのショックも少なくなって一息ついたのでありますが、ブナの林に入った頃から雨が本格的になり、足許が滑るようになった訳であります・・・滑らないように、また踏ん張っちまう訳です。
    この頃からおっさんの前を行くY譲にも遅れるようになり、全く無口で必死でありました。
    救いだったのは、なんとなく車に放り込んで来た杖を携えていた事でありまして、これが無くては一歩も進まないと言う状態でありました。

       そんな訳で、三光の宮を過ぎた頃からは激痛に頭が朦朧している状態で・・・嘘、それ程では無いにしても、まず、いたかった訳で、残り後何キロ・・・このペースなら後何分、とカウントしながら歩いている訳で、景色も糞も無いのであります。
    それにしても「丹沢ブナ党」の皆さんはホントーに健脚揃いでありまして、リーダーの千葉B氏が時間を気にして短い休みで飛ばし気味に歩いているにもかかわらず、音を上げる人も無く快調に下っておりました。
    いや、千葉B氏の速度は普通だったんでありますが、おっさんが参っていたので早く感じたのでありましょう。
    それが証拠に、旗坂キャンプ場到着は3時20分頃、と、これもコースタイム通りでありました。
    もっとも、昭文社の登山地図のコースタイムは休憩を含まずと断っている訳で、休憩を含んで、大人数の団体でその時間と言うのはやはり速いのだろうと思う訳です。

     しかし、ぉっさんも焼きが回ったんだねぇ。
    これからは年々歳々衰えて行くのだろうと思うと・・・そうだねぇ、山との接し方も考えなくちゃならないな、と、おっさんの転機を促す、よい経験になったのかも知れないな、と言う山行で有りました。

     

          

     この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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